「３０年前と３０年後」

　Dire Straits（ダイアーストレイツ）というイギリスのロックバンドの「Making Movies」というアルバムを、今聴いている。名曲「Tunnel Of Love 」の入ったアルバムだ。1980年に発表されたアルバムで、僕が２０歳の頃の曲ということになる。このバンドのリーダーでありギタリスト兼ボーカリストであるMark Knopfler（マークノップラー）は、個人的に特に影響を受けたギタリストであるが、このバンドの曲が好きで、バンドの熱が好きだったことを、今思い出す。

　流行歌は、その時代を移す一つの鏡であるが、個人の歴史がわかりやすい形で反映された記憶を共有するものでもある。そして、その時代に何が起こったか、まではなかなか音楽の記憶の中に明確に記されていない。僕の記憶が悪いからかな？音楽をライフワークにしているならば、当然音楽の記憶は良いわけで、特に２０歳の頃には音楽一辺倒であったから…。1980年を検索してみると、結構な事件が起きている。

　モスクワオリンピックボイコット、光州事件、イラン・イラク戦争、長嶋監督辞任、王引退、大平首相急死、ＫＤＤ事件、静岡駅前地下街ガス爆発火災、新宿バス放火事件などが記憶に残る事件だ。シャネルズの「ランナウェイ」や五輪真弓の「恋人よ」が発売された年と言うほうがわかりやすい方も多いかもしれないが、ジョンレノン射殺という大きな衝撃を僕はよく覚えている。この年は、一浪後、専修大学に入学した年で、新宿の高層ビル５０階の喫茶店でアルバイトをしていた。世の中のことを自分の目で認識し出した頃のことである。

　さて、昔話を描こうとしているのではない。今の２０歳くらいの人たちが、あと３０年ほどたって、今年のことを思い出すことはきっとあると思う。何と言っても、あの大きな震災があった年だから。そして、人災とも言える原発事故の結果が、３０年後にはおおよそ出ているのではないか？今はまだ、結果がどのようになるか未知の世界でもある。３０年後、エネルギー政策はどうなっているのだろう？

　今年のヒット曲がどのようなものになるのかはわからないが、ＡＫＢ４８などというような話題性だけに絞った業界ごっこを、３０年後にひどい時代だった、と言えるといいな、と思う（余談ながら僕の娘たちは彼女たちが大好きのようだし、ひどい文化はいつの時代にも存在する）。そして、エネルギー政策がよくなったから、あの時代はひどい時代だった、と言えるくらいに劇的な変化があったらいいな、と思う。それを実現できるかどうかは、僕たち一人一人にかかっている。しかし、きっと、３０年後も、福島原発周辺は、人の住むことができない場所であるような気がする。それは、一つの教訓だった、と言えるといいな。

　僕たちは、日々、何とか生き抜いている。少なくとも、僕の２０歳の頃は、何とか生き抜いている、という感じではなかった。お金だけは、あの頃も今も、変わらずに無い。清貧なんて言葉もあったなぁ。変わらなくてよいことは、働いているということ。人間は働くべきだ。僕が、これから３０年後も、やっぱり野菜を皆さんに届けているとしたら、それは素敵なことじゃないかな？３０年後に生きているなら、きっとギターも弾いているね。

2011年9月8日　寺田潤史

バックナンバーへ

ご意見、ご感想、お問い合わせは、下記よりどうぞお寄せください。

★　ひらく農園の野菜の入手方法

☆　このページの最初に戻る