「高校受験　その九」

　今朝も寒い。空は曇り、朝から突風が吹いている。気温は３度と、さほど低くはないが、また寒気が下りてきているらしく、寒い収穫の一日となりそうだ。今日は、長女の私立高校入学試験の合格発表の日である。これを書いている時点で、まだ結果はわかっていない。

　去年、８月の高校のオープンスクールまで、公立高校進学だけしか頭になかった。併願しなけりゃ心配だから、一応、私立の高校のオープンスクールも行っておこう、という感じだった。ただ、芸術科のある私立高校のオープンスクールでは、ホルン教諭のレッスンを受けることができる、と聞いていたので、どちらかというとレッスン目的のオープンスクールであったと思う。実際に、オープンスクール当日、同伴した僕は、校舎の上階にある音楽ホールで演奏や説明を聴きながら、私立高校はすごいな、と他人事のように感じていたのだった。

　ホルン教諭のレッスンを受けてみて、状況は一変した。オープンスクールを終えて、高校の正門まで向かう途中で、僕も長女も高揚していた。通常、音楽科のある高校といえども、常勤の教諭が専門の楽器を教えてくれるという割合は、かなり低い。つまり、非常勤講師の専門家が、週一回の授業の時に高校へ通ってくる、ということが多いのだ。でも、この高校では、常勤のホルンの先生がいて、毎日でもアドバイスをもらえる、という環境である。うーん、でも、私立高校である。下にまだ４人の子供たちが控えているし、お金がないから私立高校は頭になかったのである。

　考えても見たことがなかったが、奨学金を調べてみた。子供が学校を終えて働いてから返す、という奨学金である。普通、大学進学時に利用することをイメージするのだが、高校でも借りることができることがわかった。日本学生支援機構の奨学金だが、高校部門は、各都道府県に業務が移管されている。早速、その準備を始めた。ところが、その矢先、台風に直撃された。畑の被害は少ないものではなかった。２年前の台風被害、１年前の予期せぬ低温被害、今年６月以降の静岡茶のセシウム検出による風評被害、などに加えての台風直撃であった。

　そこで、今度は、入学資金の融資を調べてみた。日本政策金融公庫の国の教育ローンというものがあることがわかった。早速準備して１１月の時点で申し込みをしておいた。すぐに許可が出て、あとは合格通知を見せるだけでよいところまで段取りした。公立高校進学なら、ここまですることはない。でも、娘は単願で私立高校を受験したいと願っているし、そこまでの価値がある、と僕も考えた。また、長女だけにお金を使うわけにはいかない。残り４人が希望した時に、同じ方法を取ることができるようにしておかなくてはいけない。子供がお金を後で返済してでも行きたい学校であれば、応援したい。お金がなくても、できうることは何でもやってやる、という親の姿勢を娘に見せることはできたと思う。こちらが命をかけてやっているんだから、子供だって命をかけてやってくれ、という願いだ。

　ここまで書いて、野菜の収穫で中断した。そして、合格の一報が入った。とりあえず、安堵である。お世話になった方々に、お礼の連絡をしなくっちゃ。

2012年2月17日　寺田潤史

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