「５２歳」

　　今日で５２歳。５１歳から５２歳に変わったところで、大した変化はないはず…。と思って、去年書いた「５１歳」を読んでみた。バックナンバーを見ると、４回にわたって「５１歳」を書いている。少し変化してきたかな？この一年で…。そして、その４回のあとに、娘の高校受験のシリーズを書きだしている。５１歳になったばかりの頃は、長女の進路は霧の中にあり、具体性が何も存在しなかった。そして、高校受験を共に歩くことによって、僕もいろいろな教えをもらった。誰に教えをもらったか、って？この複雑な人間の作った社会のシステムから教えてもらった、ということかな。それとも、人の意思の発露と、それに伴う人と人のつながりからかな？

　今、ほぼ長女から解放されて、音楽の面倒をみるということはなくなった。音楽高校の先生方が、その専門性を生かして、すべてやってくれている。長女の高校受験、進学を通じて、下の子供たちへの対処がまず変化した。明確な具体性を示すように、子供に要求することが多くなった。「何でもいいから自分の好きなことをやれ」ということから、「おまえのやりたいことがこれなら、これに準じたことに時間を割け」と言うように変化した。

　それは、長女が、時間を割いたならば割いただけのことはある、ということを経験から理解したことからもわかるように、納得の行く時間というものが必要だ、ということをはっきりと子供にも示すことが必要であるということ。今、長女は、通学に時間がかかり、それでも何とか練習時間を確保しようと必死だが、専門のクラシック音楽以外に、吹奏楽部にも入ってしまったから、練習時間を思うように取れないでいる。練習時間が少なければ、納得の行く練習ができないことを、この一年で身にしみて理解したのだ。

　子供への接し方が変わったことからわかるように、５２歳という年齢は５１歳プラス１歳であり、この一年で何が変わったか？ということでもある。夜型人間だった僕が、やはり長女の受験、進学を期に、半年前から朝型人間に変わった。これも大きなことである。一日の初めに家事や音楽、思考の時間を持ってくることで、気持ちが楽になった。仕事のほかに、あれもやらなければ、これもやらなければ、ということが多いと、どこかで乱雑な生活になりがちだ。やるべきことを先にやっておけば、丁寧な生活、丁寧な仕事に入りやすいのだ。

　「丁寧に一日を」という目標を、１９９９年の年初に立て、筆で書き額に入れて居間にかけた。だが、丁寧な生き方ができた実感はなくて、まったく丁寧ではないな、という実感が年々蓄積していた。その巻き返し初めが、この一年だったと言えるかもしれない。これを進めることは容易なことではないが、これを進めていけば「味わい」の世界を感じることを増やすことができるかもしれない。

　ポジティブとネガティブ、善と悪、意識と無意識、このような二元論の世界観を持って語られることが多い現代、紙一重に一喜一憂するのもいいけれど、その瞬間を素直に生きることに特化するのもいいな、と思う。その瞬間をつかまえた、と感じた時、そのつかまえたものは君にやるよ、と言ってしまってもいいなと思うこの頃である。

2012年5月31日　寺田潤史

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