「５２歳　その二」

　５２歳、この年齢は、分別盛りの年齢だと思う。男も女も、ひと角の意見を身に付けている。それまで生きてきて、べらんめいな言葉で言えば、「なんか文句ある？」と言ってしまいそうな年齢でもある。女性は強いから、４０代でそのような風情を醸し出す人も少なくない。

　僕は、逆に、何とか生きてますよ、という感じにどんどん傾いている。「なんか文句ある？」なんてとても言えない。「おまえ何やってんだー？」と頭の後ろからいつもど突かれている。素直に生きようとすると、「おまえ、やっていることが若い頃からまったく変わっていないぞー」とど突かれる。「そうなんだよ、少年と同じだよな」と心の中で答えてしまう。まったくもって、分別盛りには程遠い。それで、久しぶりに詩を書いてみた。

「サトイモ」

おひさまに　聞いてみる
僕が僕で　あるように
おひさまに　てをあわせ
君が君で　あるように


そよぐ風に 僕の葉が
揺れる　揺れる　焦がれるように
君の集めた 朝露の
受けたしずくを こぼさぬように


おひさまに　聞いてみる
僕が僕で　あるように
おひさまに　てをあわせ
君が君で　あるように


　書いて唄ってみた。そうしたら、自分の書いた詩に救われた。そういうことってあるんだなと思った。自分のことは、皆が考える。自分以外の他者のことや、自分以外の生あるもののことも、大人になると考える。たとえばその相手が娘なら、自分がいて、娘がいて、究極的には、娘が輝いてくれることが一番嬉しいわけだ。娘を自分の思い通りにするなんて、思わないものだ。愛というものは、祈ることなんだなぁ、と今更ながら思ったのだ。そうしたら、救われて開けた感じがした。祈ることは、じっとしていることでもない。自分が自分らしくなってはじめて、相手のことを祈り、願うことができるのではないか、そう思ったのだ。

2012年6月6日　寺田潤史

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