「自分と対峙する　その３」

　君が映画を見ようといった。君の横で映画を見た。映画を観終わったあと、君は出ていった。僕は、君といっしょにいたかっただけだった。隣にいてほしかった。さびしかった。ひとりだった。耐えきれなくなって、つま先を大きくけって駆け出した。 　

　例えばこのようなシチュエーションで自分を見つめ直す時、人はどのようにしていくのだろう？「人は生まれた時も死ぬ時も一人なんだから、さびしいなんて当たり前だよ、慣れることだ」こう言う人もいるだろうか？このような人は、こうも言うだろう。「強い人間になりなさい」と。

　自分の子供たちを見ていると、人は意思を持って生まれてくることを強く感じるけれど、どのような人間になるかは、周囲の総意が大きく左右すると思う。お金がとても大事な世界でお金を稼ぎ、社会の波に揉まれてもへこたれないような強い人間になってほしい、と願う人が多いような気がする。皮肉的にいえば、社会のシステムに順応するように育て、より社会のシステムを強化するような人間に化けることをよしとする世界だ。

　子供を見ていると、とにかく新しいことに目を向け、それを自分で実践してみる時、必ず親に「見て見て」と言ってくる。親に見守られる安心感がなければ、やる意味がないかのようである。親が見ていることは、子供の精神の安定に大切なことだとは言われるが、本来は子供の側からの見守られたい、という強い意志のようなものがある気がする。さびしいことや、ひとりであることが、あってはならない状態であることを、本能として子供は知っているような気がするほどである。

　自分一人で遊ぶことや、一人で勉強することなどを知って、ひとりでもさびしくないような人間になっていくのだとは思うが、本来持っている気持ちというものは、いつ再び芽生えたとしても不思議ではない。自由な感情というものが、知らず知らずのうちに抑えられ、いや、自分で抑えているのだろう。それは自分が大人になり、仕事を持ち、家庭を持って、ますます強化され、ゆるぎないものになっていく。子供から大人まで、心の素直な開放を抑えられている、そのような社会に今生きている感じがするのである。

　かくいう僕も、子供がやりたいことをとことんやるために、子供を追い込んでいる。やりたくないなら辞めちまえ、と追い込んでいる。だけど、大事なことは「ホェーン」と子供が泣きそうな時には泣く環境を作ることだとも思う。「わからないー」と泣き崩れることがあってもいいと思う。さびしいと思う時にはそばにいてあげたい。どの道、一人で解決していかなければいけないのだから、それをただただ見守るだけだ。見守るのは、家族だけではない、とも思う。

　仕事で頼られたり、家族に頼られたり、この厄介な社会の中で強くありたいと自分が願えば願うほど、そうではない自分が抑えられていく。厄介だと思うのだから、きっとこの社会に対して違和感を持っているのだろう。この社会に敵対するには、自分をもっと強くしていかなければいけないかもしれないが、敵対すればするほどに、この社会はますます強く厄介なものになる。内在しているものは、自分自身の解放なのだ、と思うこの頃だ。

2012年8月16日　寺田潤史

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