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台風の被害は、完全に気持ちも行動もリセットすることに役立った。こういうリセットは、やりたくてもなかなかできないもので、とても貴重なこと。半ば強制的なリセットで、従うほかはない自然の営みには素直にうなずく。本格的な被害が年に2度、去年の秋からすれば3連続のようなもので初めての経験だが、まだまだタフさが足りないぞ、ってことかもしれない。
それにしても、台風から一夜明けてその被害ぶりを目の当たりにしてふーっと息を吐き、さらにその翌朝、枯れた茶色のオクラ畑に黄色の花が咲く光景は、うーんとうなるに充分な光景だった。自然現象たる台風に完敗した後に、まだ負けたわけじゃないよ、とオクラの花が言っているようだ。触ればすぐに落ちてしまうような弱い花だが、花は花としてこちらに訴えかけてきているかのようだった。
駐車場の横には、大きな栗の木が二本あって、はるか頭上には栗の実のならなかった茶色の葉が落ちるのを待っている。6月の台風で葉を茶色くし、そのあとは葉の色も確認した記憶がない。そして今年2度目の台風の後に見上げてみると、6月の茶色のまま今に至ったのか、今回の台風でさらに茶色くなったのか、思いが巡るだけである。
その栗の木を含めた駐車場周り、6月の台風から全く余裕がなくなって、8月のお盆にざっと周囲の草を刈った程度で、それからなかなか草の処理ができなかった。今回の台風で野菜の出荷が減って、昨日ようやく着手。これもリセットのおかげか。この頃は外から車で戻ってくると、お化け屋敷に戻ってきたような感じがするくらい、蔓や草が木々に覆いかぶさっていた。野菜が少ないから出荷が少ない。こういう時を利用して、草刈りをしよう。刈払い機のエンジンをかけたなら、あとは勢いのままにいっきに草を刈り終えた。
冷蔵庫小屋から駐車場ルートには、小さな柿の樹があって、夏はイラガの巣となっている。近づくとかぶれる恐れがあるので、誰も近づかないし、草や蔓は伸び放題。今回の台風で虫も吹っ飛ばしてくれただろうし、刈払い機でいっきにきれいにした。草を刈る面積が少なくないので、汗を目いっぱいかいて、刈払い機を回し続けた。台風のリセットは、どこか心に硬いものを生じさせるようで、妙に一途に仕事をさせられる。台風は自然現象だから、僕の非だと思う必要はないのだけれど、どこかで自分の非であると考えている節があるから妙だ。
台風は決して負の象徴ではなく、あくまでも自然現象だ。毎度野菜を買ってくれるお客さんひとりひとりに申し訳なく思うのは、野菜を楽しみにしてくれているのに思うように供給できないからだ。常時供給のために、まさか、台風に負けないようにと、日の当らない野菜工場を、なんて夢にも思わないし、そんなことするくらいなら農業そのものから撤退するだろう。自然現象を受け入れる、これが僕たちの大前提なのだから、堂々としていればいい。野菜がなくなったら、種をまき、苗を植え付ける。それだけのことだ。農業という時間もデッサンも自由な仕事は、自然現象を受け入れる、というリスクを常に抱えている。だからこそ、胸を張って仕事をするべきだ、なんて、リセットさんが教えてくれているようでもある。
2012年10月4日 寺田潤史
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1 | 台風禍 | バジル | スィートバジル | シソ科 | 2012年4月15日播種 | 2012年6月15日から収穫 |
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2 | 台風禍 | オクラ | スターライト | アオイ科 | 2012年5月15日播種 | 2012年7月25日から収穫 |
3 | 台風禍 | にら | サンダーグリーンベルト | ユリ科 | 2007年2月14日播種 | 2012年3月5日から収穫 |
4 | 台風禍 | ししとう | 伏見甘長 | ナス科 | 2012年2月15日播種 | 2012年7月1日から収穫 |
5 | 台風禍 | ししとう | つばきグリーン | ナス科 | 2012年2月15日播種 | 2012年7月1日から収穫 |
6 | 少 | 玉葱 | 七宝早生7号 | ユリ科 | 2011年9月23日播種 | 2012年5月10日から収穫 |
7 | 台風禍 | 空芯菜 | エンツァイ | ヒルガオ科 | 2012年3月15日播種 | 2012年6月5日から収穫 |
8 | 少 | 葉ねぎ | わかさまパワー | ユリ科 | 2012年1月15日播種 | 2012年5月1日から収穫 |
9 | 台風禍 | ピーマン | 京波、京みどり | ナス科 | 2012年2月15日播種 | 2012年7月15日から収穫 |