「縁と連鎖」

　縁というものは不思議なもので、人と人とのつながりに連鎖を起こす。その最たるものが夫婦であり、家族ということになるのだろうか？しかし、夫婦や家族のつながりであっても、相手のやってきたことを足蹴にすれば、連鎖は直ちに解ける。点と点をつなげるだけでは、連鎖は起こらない。相手のやってきたことが暖かく伝わると、どういうわけか連鎖反応が起こるのだ。

　友達という縁には、いろいろな形がある。同性同士の友達だけでなく、男女の友達関係、年の離れた友達関係などに加えて、この頃では顔の見えない同士がつながるインターネットから始まる関係も少なくない。しかし、よく考えてみれば、縁というものは、自分の過去の積み重ねの上にある。そこに相手が加わるのだ。自分の過去と相手の過去が反応し、そこからまた新しい相手の過去が加わったりする。つまり、自分の過去には、宝物が詰まっているのである。

　縁というものがもたらす新鮮な驚きを、成熟したものに昇華していくことはできるのであろうか？と、この頃考える。夫婦や家族でなくても、新しい出会いは次々と人にはやってくるものだ。あるいは、古い友達が、新しい出会いとなる場合もある。僕の小中学校の同級生の一人が、アルコール中毒で入院しているのだが、彼に会いに行って、ＣＤを渡そうかと、今考えているところだ。こういう時には、ええかっこしいはやめておけ、という人が出てくるものだが…。

　彼のことは、少なからずの人が気にとめているが、多くの人は関わりたくないと思っている。赤の他人ならともかく、僕の親父の葬式にも来てくれた彼である。仕事もできたらしいが、酒がよくなかったらしい。そして、彼に関わってきた友達たちが言うことは、関わるなら最後まで面倒を見ろ、ということである。このことは、どのような縁にも当てはめて考えることもできるかもしれないが、そういう覚悟で日常を送っている人は、案外少ないかもしれない。

　縁というものを温める場合には、性急なことが一番よくないような気もするけれど、恋愛なんかは性急であることの方が多いし、勢いがなければ結婚できない、と言う人はいる。一概なことは言えないけれど、人生において勢いが必要な時は必ずあるし、勢いを止めることのできないこともある。逆に、勢いを得たくても得られない場合も少なくない。何のことはない、思いのままに生きるのが一番健康的だろう。失敗したとしたら、それも悪くない結果なのだ。

　人と気まずくなるような形を好まずに、よい形ばかりを求めることも大いにええかっこしいだと思うのだが…。畑で言えば、虫や草とは付き合いたくないから除草剤や農薬を使う、ということに似ていないか？虫や草と付き合うことは、面倒だし人からの見た目もよくない、と考えることと…。思った通りに生きることはできないとしても、思ったことは不正解ではない、だから時間をかけて推進してみよう、と思うことは、自分と対話をしていることにならないかな？

　台風の被害を受けると、多くの方がたくさんの縁を思い出させてくれるし、お見舞いの言葉も頂く。家族も大事だが、家族以外の一人一人もかけがえのない宝物だ。僕が音楽を演奏し創造することは、自分の弱さをさらけ出してしまうということに他ならないが、もしかすると人の弱さには響くかもしれない。音楽も連鎖の一員となれるだろうか？

2012年10月18日　寺田潤史

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