「２０１２年の総括　その三」

　今年も、様々に新しい出会いや再会があった。長年に渡って音信不通の同級生と思いがけず再会する、そういうことがいくつかあった。野菜セットの販売という形の上での新しい出会いはたくさんあったが、一過性で終わることのなかった方と、お顔を拝見したことがないままにメールでやり取りして、友達のように近況を知らせ合う、そういうことも少なからずあった。

　出会いは財産である。袖すりあうのも多生の縁、というけれど、袖すりあうだけでなく、親しくなっていく様は、何かしらひとつの敬意みたいなものが感じられて、とても新鮮だ。出会った人が、年を重ねていればいるほどに、多くの経験が積み重なって、その人なりの歴史を感じるが、歴史を感じれば感じるほどに、その人自身の弱さを理解していることも感じられ、こちらの弱さも少しずつさらけ出すことができる、という安心感がある。

　世の中には、尼崎の殺人事件で逮捕され自殺した女性のような方も確かに存在する。今年は、女性の犯罪者がクローズアップされた年でもあるが、世の中の多くの方は、真剣に自分の人生と向き合っている、という事実がある。それだけ、真剣に生きている人と出逢うチャンスもあるというわけだ。人というものは、その人の中に歴史を積み重ねるほどに、自分で自分を変えることが難しい生き物のように思う。自分を変えようとする努力と、自分の個性を伸ばす、という努力は別物である。自分を変えようとしても、なかなか自分を変えられるものではないけれど、人との出会いは、自分を変えるきっかけを作るのだ。

　一方で、自分の個性を伸ばす、ということは、言い方を変えれば、偏屈になっていく、ということにもなる。その過程では、なかなか自分を理解してくれる人に出会うことが少ない、ということがある。長年の友達付き合いがある友人同士では、あいつはああいう奴だからこうだろう、という安易な了解が長年の友達付き合いゆえにできてしまうことがままある。級友グループのようなものは、ある種の安心感を与えてくれるが、ある種の固定観念からはなかなか抜け出せないグループ、と言っていいかもしれない。

　出会いは、そういった固定観念の世界から抜け出して、新鮮な空気を与えてくれるものだ。新鮮な空気を吸い過ぎて、過呼吸になってしまうことも少なくないだろう。韓流アイドルに熱狂する主婦のように。でも、そのような熱狂もまた人を成長させるだろう。大事なことは、人が人を夢中にさせることが、その人自身の細胞を活性化させることにつながる、ということだ。犯罪につながるような熱狂には用心しなければいけないが、自分本来の自由さを感じることができる瞬間は、大事にしたいと思う。

　今年は、自分のバンドのアルバムを発表できた。二年前よりも進歩したと思う。そして、もう次へ向かっている。野菜の台風被害から回復しつつあるが、また台風が来たとしたならば、同じことになるのか、何らかのやり方を提示できるのか、それはわからないが、やられたあとも淡々と出直す、というような経験も積み重ねている。野菜の生命力は、人の出会いのようなものだ。どこまでも尽きることなく、いのちが芽生えてくるのだ。

2012年12月20日　寺田潤史

バックナンバーへ

ご意見、ご感想、お問い合わせは、下記よりどうぞお寄せください。

★　ひらく農園の野菜の入手方法

☆　このページの最初に戻る