「５３歳」

　３１日で５３歳。……汗。からだは老いていくばかりであるのに、気持ちはまだ若いつもりでいるところが滑稽だ。実のところ、この半年で、かなり疲れが取れにくくなっていることを自覚している。疲れをようやく取ったと思って忙しくすると、また疲れがたまってくるのだ。当たり前といえば当たり前だが、その周期が短くなったのだ。

　あー、疲れがたまってきたなぁ、あと２週間もすると倒れるぞ、と警戒すると、今まで２週間持っていたものが、２，３日でピークを感じるくらいだ。からだの声が、正しく自分の脳に反映できていないということだろう。これは、カラダそのものが急激に衰えてきているという単純なものだけではなくて、自分のカラダの状態を把握する脳が退化してきているということかもしれない。カラダそのものを割り引いて考えるどころか、脳の判断力すら割り引いて考えなきゃいけない、ということか？

　宴会などでお酒を飲めば飲めてしまうが、飲んだ翌日あるいは翌々日まで影響を及ぼすことも、同じように脳の判断力が退化しているからなのかもしれない。こんなにカラダが悲鳴を上げているのに気づかない脳みそ！一口に退化と言っても、進化させようとしないことが退化の大きな原因のようにも思われる。まだ若いと思っているだけで、カラダを鍛えてこなかったツケ。進化させようと鍛錬してきたことに関しては、そんなに退化を感じないものである。

　たとえば、音楽の演奏などがそうだ。若いころから、自分のギターを録音してきた。レコーディングという録音もあるが、覚え書きのような簡単な録音もある。若いころは、自分がギターを弾いてこのような感じの演奏を記録できる、と客観的に予想することが困難だった。今演奏していることと、録音してみた音がかけ離れていたのだ。簡単に言えば、予想した音よりもはるかに下手くそな演奏が録音されていることが多かったのだ。しかし、年を追うごとに、弾いた音がイメージに近くなっていった。５０歳を過ぎても、それは進化していると言えるだろう。

　つまり、進化させようとしてきたことに関しては、日々の積み重ねゆえに、退化することはあまり感じなくて済む、ということだ。それで、あわててカラダを鍛えはじめたところで、効果よりも鍛えることの疲労のほうが色濃く出てしまう。少しずつ長きにわたって、ということが結局一番説得力もあるし納得もいくというものであろう。それはそうだ。ギターなんて１５歳の頃から、ずっと進化しようとしてやってきているのだから。カラダの鍛錬をそれだけやってきたなら、また違った５３歳になったかもしれない。しかし、今からでも遅くはない。少しずつカラダも鍛えてみようじゃないか！

　畑の世界では…。野菜の作業で一番たくさんやってきたことは、種をまくことだ。そう、種をまかなければ、野菜の世界は何も変化はしないし、何も恵んではくれないのだ。どんなに台風に打ちのめされたって、次にやることは種をまくことである。種をまけば、必ず芽が出る。芽が出てからの環境をどのようにしていくかが、僕のやることだ。農の世界の鍛錬は、一年中種をまき続けることであろう。５３歳になっても、それは変わらない。

2013年5月30日　寺田潤史

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