「六月の台風」

　先週に引き続き、またしても六月の台風である。台風の季節と言えば、八月下旬から十月初旬までの頃であったはずが、近年は毎年のようにこの時期にも台風が来るようになった。でも、二週連続なんて初めてのような気がする。これは、季節が四季から二季へと変わってきていることを示すのだろうか？

　この台風、梅雨の時期の日照りを解消する唯一の手立てにもなっている。特に西日本で。梅雨の時期の日照りなんて、ブラックジョークのようでもあり、笑えない事態でもある。お天気のことを気にする人がどれほど多いかは知らないが、農家の田植にすら影響が出ているようだった。お天気を予想する職業の人も大変かもしれない。僕たちも、毎日お天気を基準に仕事を重ねている。お天気に従うほかない僕たちが、お天気を予想する職業の方の示す天気予報を毎日食い入るようにチェックしているのだ。

　どうして食い入るように天気予報をチェックするのか？それは、天気予報が当たらないからである。当たらないといっても、占い師や宝くじのような性質のものではなくて、科学的根拠に基づいた予想であるはずだから、予想が逐一変化するということ。一日のうちで、予報がコロコロ変わっているところに、天気予報を職業とする方々の苦悩を感じる。それは、過去の統計とのギャップが大きく生じているということかもしれない。

　お天気を気にして生きている人は、今まで生きてきた年数分のお天気情報が体に刷り込まれている。その経験と言うべきものを基準にして、その人なりの気候の感覚というものが形作られているはずだ。その基準からはみ出したお天気。一度はみ出したきりではなくて、はみ出したところからさらにはみ出てしまうという、エスカレートした状態。繰り返されたところから、少しずつ突然変異のようなものをまとって予想できない状態へと変わっているのだとしたら、これも進化のひとつなのかもしれない。

　人間は、進化しないと気が済まない生き物だ。一方で、まわりの環境の変化にはなかなか馴染めない生き物でもあるだろう。六月から十月までひっきりなしに台風がくる、それが当たり前になったなら、それはそれでそういうものとして対処するだろう。もっとも、そうなれば、被害の出やすい野菜などは、作付けをしなくなるような気もするが…。問題は、自分たちがひどい天候すら楽しむことができるかどうか？ということだろう。

　今朝、コンフェデレーションカップサッカーの試合があった。日本の負けも悔しいが、イタリアと接戦を演じて、しかも攻め続けて、ワンタッチパスをいたるところで通し、シュートを数多く放ったことなど、とても楽しめた試合だった。少なくとも、ブラジルの人たちには、日本のサッカーが受け入れられたことだろう。そこには進化も感じるし、選手たちの日々の努力、陰に隠れた育成段階での多くの人たちの努力を、試合を楽しむことで消化するという一つの形があるように思う。僕たちが、台風などの天候を気にしながら育てた野菜も、味覚を楽しむということにおいて消化されたなら、それは幸せなことかもしれないね。

2013年6月20日　寺田潤史

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