「夏の収穫　その２」

　昨日は立秋、と聞いて、ちゃんちゃらおかしな気分になってしまうくらい、暑さは絶好調である。秋の気配をどこに見つけたらよいのやら？でも、まあ、永遠に真夏ということもないだろう。生きて働いてさえいたならば、それで十分に素晴らしい、と自分を慰めたくなる夏だ。

　収穫と出荷、配達、収穫している野菜の世話、それだけで一日が過ぎていく。この真夏特有の仕方がないような感覚は、子どもとのサッカーのおかげで更に加速している。一日の終わりに、ハードなサッカーでさらに汗だくになると、もう風呂場に飛び込まなければやっていられなくなって、夕方の仕事はおしまいになってしまうことが多い。サッカーのせいか歳のせいか、暑さで疲れるので睡眠時間もいつもより多い。よく眠っているから、よく体が動く、とも言えるかな？

　朝晩、僅かな時間を見つけては、ギターやベースの鍛錬はしている。だが、創作の意欲は、暑さに負けている。例年、旧盆を過ぎたあたりから、創作の意欲に火がつくことが多い。詩は、数か月も書いていない。曲は、ちょこちょことメモ録音しているのだが…。

　去年制作したＣＤを久しぶりに聴いてみる。手前味噌ながら、意外によい。というか、やりたいことを表現しているなぁ、と我ながら感心してしまう。ちょっと引いて考えてみると、相当の熱と執念がなければ、このようなＣＤは作れないな、と思うのだ。このようなリズムやメロディの味わいを、他の人に出せと言ったところで、出来る人はあまりいないはずだ。それが、多くの人に受け入れられるかどうかは、また別のことだ。

　二年に一度、このようなＣＤを制作するとなると、もう着手しなければいけない時期だ。いや、正確には、去年から着手していて、大方アルバムの輪郭ができかけたところで、一度ご破算にした。そして、やり方を変えるべく、基礎的な訓練に時間を費やしているのだ。具体的なことにはここでは触れないが、毎日の積み重ねが必要なこともあるということ。リハビリのような積み重ねといっていいかもしれない。今までの鍛錬に別の鍛錬を加える、という生活。

　野菜と関係のないことを書いたが、僕にとって、野菜も家族も音楽も、どれもとても重要なものであることは間違いない。常にそのどれもを考えている。だが、このような暑さの時には、まず生きることを考えなければいけない。例えば、小学一年生の長男にとって、サッカーは重要なもののようだ。夕方、僕とサッカーをすることが生きがいのようなものなのだ。だから、僕も、時間がないし、疲れていても暑くても、蚊が多くても、サッカーには付き合う。

　僕はサッカーが好きで、見ることも大好きだし、毎日サッカーのニュースもみているけれど、サッカーがなくても生きていくことができる。サッカーの相手をするのは、あくまで家族の自主性を尊重するためだ。そして、僕の自主性は、野菜や音楽の中にある。これらは、受け身ではできない。大変なエネルギーを必要とするものと、対峙しているのだ。暑さの中で、毎日野菜を収穫し続けること、それもまた大変なエネルギーの中で行われている。エネルギーの向きが前を向いた時、人には、それらに付随するものとも容易に対峙することができる、そういった性質があると思う。そのような流れが、この暑さの中にもあるのだろう。

2013年8月8日　寺田潤史

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