「この夏を記憶に残そう　その２」

　先週には、猛暑は続くよどこまでも〜のような気分でこれを書いたが、見事に猛暑を裏切って、気温１９度！という夏には予想できない数字を示してくれたお天気様である。数字どころか、いつものように下着姿で網戸のまま眠るにはいささか寒いくらいの、体感をも示してくれた。２７度から１９度へという急降下な最低気温は、夏としては前代未聞の出来事だ、と言っていい。

　今日はいささか暑く、夕方には湿度が上がって、蚊も大挙して出現する夏に戻ってきた。そう簡単に秋になってくれても、夏野菜には困る。夏野菜は、湿度や気温を必要とする。オクラは、湿度がものをいう野菜だ。オクラの実の表面は、小さな水滴に包まれていることが収穫時に確認できる。そこへ虫も卵を産み付けて幼虫となり、オクラの実を食害する。表面には、小さな虫が這っていることがある。それらを軍手できれいに拭いながらの収穫である。細かな水分がついたままでは、仕分け作業もやりにくいし、虫はその時点で、きれいに拭い去られているのが気持ち良い。まるで湿度がオクラの実を大きくしているようだが、湿度が低くなって気温も下がると、収穫量も減る。１９度になった時には、実際に収穫量が減った。

　オクラのことも含めて、その気温の差、体感温度、７月初めからの猛暑、そういったことをひっくるめて、この夏は記憶されるだろう。子どもたちをほとんどどこへも連れて行かなかったこと、夕方の長男とのサッカー、なども記憶されるかもしれないが、夏休み最後の日の子どもたちの慌ただしさはきっと忘れ去られてしまうだろう。

　農家としては、はじめて二つのファーマーズマーケットに常時出荷し続けた、という夏でもあった。宅配便も含めて自然食品店や定期購入の方々のほかに、ファーマーズマーケットに毎日足を運ぶことは、簡単なことではない。毎日の積み重ねというものは、どんなジャンルの事柄でも馬鹿に出来ない大きなものがある。小さなことを集めてまるでフンコロガシのように、あるいは雪だるまのように、何者かを肥大させていくのである。肥大させていくのは、必ずしもよいことばかりではなくて、錯覚も肥大させる可能性もある。それでも、毎日こつこつと粘り強く続けることには、その人にしか出せない味わいを生むものなのだ。

　と、これを書いていたら、ほかの子供たちは寝静まっているというのに、次女が僕のところに来て、「倒立の練習に付き合って」ときた。体育大会で倒立を全員でやるらしい。子供たちの中でも、特に次女だけは運動神経が発達していない。運動関係は、何をやらせてもダメなタイプだ。中学３年だから、体も大きくなってきている。重い体を両手で支えなければいけないが、腕立て伏せは、まったくできない。卓球でもバスケットボールでも、妙な動きをする。簡単に言えば、体を動かすことに時間を割いていないのだ。体を動かさないできたツケが、今になって倒立できないことにもつながっていうるような気もする。

　この機会に、次女も体を動かすことを習慣づけて、体を動かす人の気持ちを理解するのもいいかもしれない。そして、今日から毎日腕立て伏せを続けたならば、次女に新たな夏の記憶が残るかもしれない。反復練習は、記憶を体に刻み込むことだ。

2013年8月29日　寺田潤史

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