「お祭りの前の暑い秋　その２」

　それにしても暑い。七月初めに梅雨が明けて、そのままずっと暑い夏のままのようである。途中、朝の気温が１４度などという１１月初めのような気候があったことは、まるで過ぎ去った余興のようだ。秋雨前線の言葉もニュースでちらっと聞いたが、秋雨らしい雨はほとんどなく、雨はすべて台風が持ってきてくれたようなものだった。地域によっては豪雨となるような雨だったが…。

　うちの三女、四女、長男は、お祭りの太鼓の練習で、完全にお祭りモードである。中１の三女などは、地域のおじさんたちに乗せられて、大太鼓の何種類かを覚えて、太鼓を叩くこととその恩恵に目を輝かせている始末だ。それを見ている小４の四女は、憧れの眼差しだし、そういうことが小１の長男にも波及して、とうとうサッカーの練習を今日はしなかった。「サッカーとお祭りとどっちが好きなんだ？」と意地悪な質問をすると、うーんとうなって、「香川(選手）ってお祭りとかしなかったの？」と問い返してきた。と言いながら、僕が納屋で種播きをしている間の寝る前の時間、６月の日本代表対メキシコ代表戦を見ていたようだった。

　高２の長女は、今回お祭りには参加しないようだ。お祭り好きであるけれど、自分の進路を考えると、それどころではない気分なのだろうか？テスト前でもあるし、羽目を外して元に戻す自信がないのかもしれない。あと１年半で自分の将来の選択肢が大きく変わるかもしれないのだからね。中３の次女は、もうあんまりお祭り自体に興味がなさそうである。絵を描いて、ネットでコミュニケーションをとっていることに満足が得られるのだろう。次女には、奨学金の申請用紙の記入を指示した。そういう時期に来たのだった。

　長女が奨学金を借りているから、次女は同じようにするだけである。私立と県立の高校の違いだけだ。何事も、最初の経験をする一番上の子の時には慎重になるものだが、２番目以降は何とも気楽な感じにはなる。しかしながら、高校を降りる時の子供の進路だけは、ちょっと想像できない。一人一人が全く違う道を進みそうだからだ。長女なんぞは、東京芸大に入れなかったら、どんな道を行くことになるのか、謎である。芸大に入ることができたとしても奇跡だと思うが、入れない場合の進路を、どのように選択していくのか、どのような出会いがあって、どのように進んでいくのか、そこはまったくわからない。高校入学の時には、次から次へと良い先生が現れて、予期せぬ道にすんなりと入ることができたが、今度はそう簡単な道でないことを、おっとり型の長女でもわかっているようである。

　次女の漫画家への道も、本当に先は全く見えない。奇跡になるかもしれない長女の芸大進学よりも、もっと霧が濃い、と言っていい。まあ、でもよく考えてみれば、長女の中３の時のお祭り前の時期、それは霧が濃かったこと。僕が毎日のように、長女の聴音や歌に付き合ったっけ。こんなんで私立高校の音楽科に入ることができるのか？と思ったものだ。今はほとんど僕が口出しすることは少なくなった。次女は次女なりに進むだろう。それでも、きっと毎日次女に対してもつぶやくのだろうね。緊張感のかけらを思い出させるように。

2013年10月10日　寺田潤史

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