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畑の一部に霜

「虫殺し その2」



 今夜も台所で洗い上げをしながら、見つけたゴキブリの子供を指先でつぶすと、それを見ていた四女が言う。「よくそんなことできるねぇ。おとうさんとおかあさんだけだよ、そんなことできるのは!」と。僕は答える。「毎日虫ばっかり殺しているからねー。それが仕事だからね〜」

 野菜の有機栽培とは、化学肥料を使わないで有機質肥料を使うこと、が語源のひとつとなっていると思うのだが、農薬や除草剤を使わない、ことも大きな意味を持つことは言うまでもない。高温多湿のこの国は、虫の宝庫でもある。野菜を食べる虫を害虫と呼び、その害虫を食べてくれる虫のことを益虫などと区別する。人間の勝手な区別である。どの道、虫は殺すのである。その殺し方が、特定の虫だけ手で殺すか、あるいは毒薬で皆殺しするか、の違いだ。

 帰農したころは、ほとんど虫も殺さなかった記憶がある。虫に食べられた残りだけを収穫するやり方である。確かに、自然に近い方法で栽培をすると、ネットも掛けないで草の中に虫のつかない野菜ができる時もあるから、そういうものを理想とするそういったやり方も無きにしも非ずではある。しかし、コンスタントに一年を通して野菜を出荷し続けるという形になると、それは無謀に近いし、ましてや家族を持てば、お金も稼がなくてはいけないので、やり方も変わってくるのである。一人や二人で生きていくことが理想であれば、理想を貫くのもよいけれど…。

 現在のやり方は、特に被害がある虫だけを、徹底的に手でつぶしていく、というやり方である。また、出荷に際して、虫のついたまま出荷する気はないので(もちろん見逃してしまうこともあるけれど)、収穫後に虫を取り除いていくやり方もある。「俺の大事な野菜娘を食っちゃいかんよ」とつぶやきながら虫を潰すのだが、たとえばレタスにつく赤いアブラムシの場合には、違うことも考える。

 アブラムシは、親が卵ではなくて、いきなり子を生む場合が多い。産んだ後には、親がいて、点のように小さな子が数匹近くにいる。その時点で親子ともども皆殺しにするのである。あちこちに散らばってからでは労力は増すばかりだ。しかし、ふと考える。子を産むという崇拝すべき行為のあと、親子ともども皆殺し、って相当ひどい仕打ちというか、正気の沙汰ではないね、と思うのだ。

 人間の世界で戦争する人たちは、銃や大砲、刃物などをつかって殺すらしいが、化学兵器を使うことだけは戦争をする人たちの間でも非難の的になる。野菜の世界では、化学たる農薬などを使うことは当然の世界で、有機栽培する人のほうが白い目で見られることが多い。本当に人間というものは、不思議な生き物である。

 僕は野菜を収穫して届けることが目的なので、野菜を守るために虫を取る。薬をふりかけた食物を食べたくないし、薬でできた栄養素でできた(化学肥料、調味料)食物を食べたくないだけなのだ。そのような無謀な食物は、しかし、お金を得るためには大手を降って宣伝されている。お金を稼ぐ背景を考えないのが、頭の良い人の考えることなのだな、本当に不思議な生き物であるなぁ、などと思いながら、僕は今日も虫を取るのだ。

2013年11月21日 寺田潤史


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1 葉大根源光 アブラナ科 2013年10月1日播種 2013年10月25日から収穫
2 在庫少 ミント(自)ミント シソ科 2013年3月10日播種 2013年4月13日から収穫
3 にらサンダーグリーンベルト ユリ科 2007年2月14日播種 2013年3月5日から収穫
4 在庫少 間引き人参スターライト セリ科 2013年9月10日播種 2013年11月10日から収穫
5 在庫無 バジルバジル シソ科 2013年8月1日播種 2013年9月4日から収穫
6 にんにく上海早生 ユリ科 2012年10月30日播種 2013年4月27日から収穫
7 在庫無 ラディッシュバードランド アブラナ科 2013年10月1日播種 2013年10月25日から収穫
8 在庫少 葉ねぎわかさまパワー ユリ科 2013年1月10日播種 2013年4月9日から収穫
9 在庫無 空芯菜エンツァイ ヒルガオ科 2013年3月10日播種 2013年6月25日から収穫
10 在庫無 水菜早生水菜 アブラナ科 2013年9月10日播種 2013年11月7日から収穫
11 さつまいも黄金千貫 ヒルガオ科 2013年6月15日播種 2013年10月22日から収穫
12 在庫少 小松菜きよすみ アブラナ科 2013年9月10日播種 2013年11月3日から収穫
13 在庫少 サニーレタス晩抽レッドファイヤー光 キク科 2013年9月1日播種 2013年10月24日から収穫