「２０１３年の総括　その１」

　今年も早くも１２月。とにもかくにも、今年を乗り越えてきたことに感謝したいと思う。あまりにハードな日々だったような気がして、何をしたかも覚えていない有り様だ。５３歳？何それ？というくらい、なりふり構わず日々を超えてきたような、そんな印象がある。

　この一年も、例年に増してお天気のことを話題にしてきた。それほどに強烈なお天気、あるいは極端なお天気が多かったということがわかる。年の始めから３月初旬まで、とにかく寒くて、暖かな日差しが恋しかった。恋しかったのは自分の肌ではなくて、野菜にとっての恋しさである。そういえば、１月には娘のコンクールに付き添って、東京に２度行ってきたなぁ、と何年も前の事のように思い出す。その２度目の時は、東京にはまだ雪がたくさん残っていた。阿佐ヶ谷や御茶ノ水を歩きまわって、もう東京には僕の必要なものはないな、と感じたのもあの雪景色の中だ。

　春が来て、畑の野菜が成長を見せると忙しくなるのは毎年のこと。軌道に乗りかけた６月、２度の台風が来た。被害があったのかさえ、もう思い出せない。そして、７月に入るとすぐに梅雨が明け、長い長い夏が来た。今、毎朝最低気温が２度前後の日々からは、あの夏の暑さを具体的なイメージとして思い出せない。こう書いてみると、長く厳しく寒い冬と、長く猛暑の続く夏が、春と秋を短くし、その短い季節に台風が来る、という循環に気付く。

　天候不順が当たり前、のような状態が続くと、そこにいかに対処していくかが人間の工夫するところなのだが、なかなか思うようにはいかないものだ。この秋も、秋が短くなることがわかっていながら、暑い中をわざわざ虫の多い畑に野菜を植え付けることができなかった。無理して種を播いた大根は、どうせ虫に食べられて少ない収穫だろう、と思ったが、しっかりとシンクイムシを取ることに時間をかけたから、今の収穫がある。どんなに冬が寒くたって、納屋で種を播き、苗床で育て、植え付けを繰り返していたならば、春には豊富に葉物類が収穫できる。

　こつこつと仕事をすることが、やっぱり成果が上がる。それでも、台風の風は、いっきにそれらの収穫の見込めるものを根こそぎ吹き飛ばしてしまう。台風に対処することは、難易度が高い。来年も台風が来るだろう。どう対処するか？先のフィリピンに上陸したとてつもなく大きな台風は、まるで津波を携えた台風のようであったことを、テレビで写していた。あんなものが日本に来れば、対処どころか、人そのものが生きることさえ簡単ではなくなってしまうだろう。そのようなことが現実に起こらないとも限らないような、それほどの天候不順でもある。

　これらの天候から僕が得たものと言えば、一つ一つの仕事を楽しもう、ということだ。野菜と対峙し、草と対峙し、虫と対峙し、土と対峙する、それらの瞬間を楽しむことだ。そこには味わいがあり、神と呼んでもいいようなものが宿るような気がする。それらを楽しむには、僕が個である必要がある。子供の親であるとか、夫婦の夫であるとか、有機農業者であるとか、いろいろな肩書は存在するだろうけれど、自分が個になることで対象物との関係を神が司ってくれるような状態、その時には何も考えないで楽しんでいる状態になることができる。過去は事実であり、未来はわからない。天候不順への対処も、楽しんでみよう。

2013年12月5日　寺田潤史

バックナンバーへ

ご意見、ご感想、お問い合わせは、下記よりどうぞお寄せください。

★　ひらく農園の野菜の入手方法

☆　このページの最初に戻る