「２０１３年の総括　その２」

　なりふり構わず生きたこの一年だったが、ひとつひとつのことを楽しむ余裕のようなものを見つけた一年だったと、先週書いた。奇しくも今日のサッカーニュースでは、マンチェスターユナイテッドの香川選手がインタビューに、「…精神的なところで言えばギリギリの戦いかもしれないけど、自分に言い聞かせているのは、この状況を楽しむということ…」と答えている。香川選手も僕も、好き好んでこのような仕事をしているのであり、やらされているのではない。台風に翻弄され、天候に翻弄されてはいるけれど、大好きな野菜たちも草も風もお日様も木々も、飼い犬も猫も古びた家もあるのである。

　ひとつひとつのことを楽しむには個である必要があるが、家族が多いと仕事も多い。それらも楽しみの一つにする。洗濯物を干す楽しみというのもある。洗濯をすることが義務になると苦痛になるけれど、洗濯物を干すやり方も人それぞれに違ったやり方があるわけで、僕はそれを自分なりに工夫して楽しんでいるのだ。食器洗いもそうである。食器を洗う義務となると「あーあ」ということになるけれど、食器洗いに付随する台所の片付けと整理は気持ちよさと創造性につながるし、自分を奮い立たせるには都合の良い仕事でもある。

　問題は、草取りでも堆肥まきでもそうだけれど、一つ一つを楽しむには、時間を多く費やすということだ。時間は誰にでも平等にある、との一般的な説もあるけれど、つまらないことは長い時間に感じるし、楽しいことはあっという間に過ぎる、という不平等が存在するのだ。そう、楽しんで仕事をすることは、一年があっという間に過ぎていくということになる。そのことを拡大解釈すると、あっという間に年をとることは、楽しいことがたくさんであるからよいことだ、ということにもなる。

　四苦八苦しているうちに一日が終わってしまう、ということがよくある。例えば、畑のトラクターが故障して、その修理に一日を費やしたなら、「いったい俺は何をしていたんだろう？畑仕事をひとつもこなしていないじゃないか！」と自責の念にかられるのだ。ああでもないこうでもない、と万策尽きるまで頑張ることも、あっという間に時間が過ぎていくのだから、実はこれ楽しんでいたことになるかもしれない。自責の念に駆られるのは、その費やした時間でもっとほかのことができたんじゃないか？という欲の塊なのかもしれない。

　それらの仕事の楽しみは、常に経済と天秤にかけられる。夫婦二人だけならいざ知らず、子供を育てるにはお金がかかることは確かだ。子供たちは、お金がないからと友達や先輩たちとのボーリングや食事会に行かないけれど、替りに家の庭の木にロープを掛けてブランコを作って遊んで満ち足りていたりもする。子供が外で遊ぶ姿、とりわけ自然環境に近いところでの遊びは見ていて気持ちがよいし、応援したくなる。薪割りを喜んでやる四女の友達を見ていて、本来子供はそのような資質を持って生まれているんだな、とも思う。経済優先の画一化したものを子供に提供するのは、大人の怠慢であろう。創造性に目を輝かせる子供たちを、僕はいつも見ていたい、と再確認した年でもある。楽しみは常に足元にあるのだ。

2013年12月12日　寺田潤史

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