「２０１３年の総括　その４」

　年末、クリスマスを前にして、予期せぬことが起きた。９９歳の一緒に住んでいる僕の祖母が他界したのだ。予期せぬ、というと突然の死ということになるけれど、覚悟はできていた。１０月のお祭り前に、脳こうそくでトイレで倒れて入院した。左半身付随で、食事もできずにいわゆる寝たきりで、ひと月経つと意識もあまりはっきりしない状態となっていたのだ。しかしながら、強靭な生命力で２か月半を生き延びていたので、年末の他界は予期していなかった。

　突然の葬儀は、年末ということもあり、葬儀の終わった後のあわただしさを倍増させた。病院からの搬送の手配から葬儀の準備で一日、お通夜で一日、葬儀で一日をめまぐるしく過ごすと、あっという間にクリスマスだった。子供へのプレゼントは何も用意していない。野菜の仕事は後ろ倒しで集中し、部農会長の仕事もいつの間にか忘れて放置していた。今日までに何とかそれらを取り戻したが、ばたばたであったことは確かである。

　子供のクリスマスも当然仕事であったが、どうにかこうにか時間を割いた。今年はお金にさらに余裕がないので、ひとり頭のクリスマスにかかる金額もわずかだ。三女にケーキ材料を買い与えて、クリスマスケーキを作らせた。葬儀でもらったイチゴが活躍したし、ケーキ製作にかかる時間を惜しむような娘ではない。七歳の長男のために、鉄の枠のサッカーゴールを完成させた。夜中に鉄に穴をドリルで開けて、朝飯抜きで調整をした。１２歳以下でも使える高さ２ｍ１５�pほどを確保し、幅は３ｍと短くした。ネットは、防風ネットの転用である。

　ちなみに、今日は、僕がシュート練習の見本を見せるために、思いっきりボールを蹴ってゴールマウスのバーに当て、その跳ね返りが思いっきり僕の顔面を直撃した。顔面だけならよいのだけれど、かけていた眼鏡にもボールが当たったために、そのメガネが眉の下に食い込み、血が流れた。鉄のバーは、頑丈だけれど危険である。

　夕方は出荷を終えて、葬儀で播くことができなかったエンドウ類の種播き。その時に思い出した。地元の「いもずるねっと」というつながりからの原稿依頼を。明日が締め切りだった、と。「ふるさと」について書いてほしい、との要望だった。１時間ほどで書き上げて、メールに貼り付けて送った。内容は、ふるさとは子供の眼差しによって変化し、食というものがそれに深く関わって形成されていく、というようなものである。

　祖母が倒れてふた月半。仏の間の水を毎日替えるようになって、祈りの時間をほんの少し生活に取り入れ始めた。祖母が他界する前には、祖母の現世での摩擦を少しでも和らげるように、と祈った。祖母が他界してからは、大地が空間と和合し、この世のいさかいが少しでもやわらぐように、というようなものに変わった。どういうわけか、祈りはご利益祈願ということにはならないようだ。祖母が健在だった頃は、ご先祖さんに感謝しなさい、と二言目には強制してくるものだから、仏の間には殆ど行かなかった。今はこうして、自分の変化を受け入れている。継承されていくものは、言葉ではないんだな、と思う。人の背中を見て、自分がどのように変化し、何かを継承して、人は人と人をつなげていくのかもしれない。

2013年12月26日　寺田潤史

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