「春がざわめいている　その３」

　春がざわめいているのは、「子供たちのせいだ！」と言っているのは野菜の苗たちである。苗の植え付けが遅れているのだ。春の農繁期に、やれ高校入学だ、やれコンクールだ、卓球の試合だ、サッカーの試合だ、ピアノだ、春休みだ、などと人間世界のややこしに取られた春の、野菜の苗たちの嘆きである。もちろん、天候もおかしいから、木々や草花もざわめいているのだが…。ドカンと降る雨、上下動の激しい気温、突風のきまぐれさ、それらは人間世界と相まって、この春を混沌としらしめている。

　子供の親からすると、親は子供の雑用係のようなものだ。コンクールでは、運転手兼マネージャー、高校入学では関係書類の事務方、ピアノやサッカーの練習の送り迎え、運転手にも相当な時間をとられるし、お前たちにお金がかかるから稼がしてくれ、と言いたいところだ。お金を使わせておいてお金の出処を制限しているような存在、それが子供たちである。

　今日も出荷が終わって、畑にズッキーニの苗を植えていた。半分はすでに植えてあるのだが、もう半分がもう遅い植え付けだ。そこへ、三女から電話がかかってくる。四女と自転車で街へ買い物に出かけて雨に降られたのだ。ズッキーニの苗を植え付ける前に、彼女たちに持たせたiPhoneに僕が電話を入れていた。雨が降り出す前に帰ってくるように伝えるためだが、買い物に夢中で電話に出ない。何度電話してもダメだったのである。案の定、雨は降りだした。コンビニで雨宿りしているという。そこへ、今度は長女からも電話が入る。雨だから迎えに来て、と。

　夜は、葉ねぎの種播きをした。しかし、種播きをするまでに、やらなければいけない仕事が残っていた。消費税の改正で、通販サイトを訂正しなければいけない。送料の変更は済ませてあったが、代引き手数料などの各種手数料等の変更がまだであった。消費税を改正する政治家は、いつだって大風呂敷を敷くだけで、細かなことは人任せであるので、その作業の煩雑さや、結果的に値上がりするために割を食う末端の者の気持ちなどに目をくれたことが一度もない。世の中の人達が政治家嫌いになるのも無理はないのである。この消費税改正もまた、春をざわめかせる原因の一つだ。

　とうに満開を過ぎた桜の花も、風と雨と気温差に翻弄されて、人様に愛でられることも少なかったのではないか？どんなに春がざわめいても、いつかそのざわめきは終わる。もう少しで、静かな春に戻ってくれるだろう。人は、人のために生きるのも必要だが、自分のために生きることも必要だ。自分のために生きることが、人に繋がっていくから。

2014年4月3日　寺田潤史

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