「農繁期２０１４」

　４月は多忙の時だ。農繁期と言ってもいい。数年前にお米の作付けをやめ、遠い地でのお茶栽培もやめてしまって、野菜に専念した。それまでは５月が農繁期であったが、今は４月が一番忙しいと思う。子供たちの年度替わりということもあるが、野菜の売れ行きもよい時期なのだ。

　野菜が売れるということは、野菜の収穫に時間を費やすということで、野菜の植え付けがなかなか進まない。畑に伸びた草を刈りこんで、トラクターで耕す時間もなかなかとれない。夕方には子供たちも戻ってくる。そそくさと宿題を片付けた長男が、サッカーボールをもって擦り寄ってくる。しょうがないから、駐車場で機械の仕事をしながら、しばらく長男のサッカーを見て、あれやれこれやれと指示をする。そして、畑に戻る。

　昨日は暗くなるまで耕して、駐車場の照明をつけて、しばらくサッカーの相手をした。そのあとに、苗用の培土を撹拌機で暗闇に音を轟かせて仕込んだ。そこへ、長女が帰ってくる。次女は遅くて、まだ自転車に乗っているらしく心配になる。長女は、進学するために必要な楽器の教則本などの情報を持ち帰ってきて、僕に放り投げてくる。仕方がないから、インターネットであれこれ検索して、注文する。そこでもう、くたびれてしまった。納屋での仕事は諦めて、一杯やりながら夕食をとる。

　足の筋肉も疲れ果てているし、歳のせいかこのごろは肘も痛む。長女は、思うように勉強や副科のピアノの練習時間がとれないので、朝早く起きてやりたい、と言い出す。それで、朝の３時に起きたいが起きれないから起こしてくれ、と言う。この頃は４時を回らないと起きれなくなっているらしい。母親は４時半に起きて弁当を作るのが日課なので、３時には起こしてくれない。ここ２日連続で３時までうとうとしながら起きていて、長女を起こした。

　昨夜は、風呂に入ってから、納屋に行き、この週刊てーてを書いて起きていようと思ったのだが、気がついたら、椅子の上で３時になっていた。あわてて長女を起こしに行ったら、珍しくすでに自分で起きていた。何をしているんだか、我ながら呆れるが、こういう雑多が農繁期を加速させるのだろう。しかし、ふと考えると、もう４月も中旬で、こうして忙しくも生きていられる、過ごしていられることが何とも不思議である。

　生きているのが当たり前と思うことが出来る人は、それはそれで幸せなことだと思う。忙しくて生きている事を考える余裕もない、そういう時期も幸せなことだろう。一寸先はどうなるかまったく暗闇だとしても、一点突破を図る、そういう気持ちを持続させることは難しい。この一年で長女は、その一点突破を図っている。その手助けなら、どこまでもやってやろうじゃないの、という気持ちが、年々強くなっていくのは何故だろう？

　四女のピアノの発表会用の曲の譜読みを、長女も次女も忙しくて一緒にやってくれないので、時間をみつけて僕がやる。時間があればどこまでも付き合うけれど、カラダが八つ裂きになってしまいそうだ。畑の草はどんどん伸びてくる。今朝は雨だから、夏野菜の遅い鉢上げをしよう。三女が学校から帰ってきたら、スイーツを作れ、と言おう。

2014年4月18日　寺田潤史

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