「ゴールデンウィーク２０１４」

　どういうつもりだい？そんなに時間を早く回す必要があるのかい？もう５月だよ、というような内なる声と、どうにかこうにか４月を超えたぜ！ともう一つの声が聞こえてくる。世の中はゴールデンウィークである。昨日もファーマーズマーケットに納品に行って、お店の人から、「子供さんを連れてどこかに行かれるんですか？」と聞かれた。

　あまりに、僕の頭の中に子供を遊びに連れていくという感覚が抜け落ちていて、咄嗟に答えが出なくて、「仕事でしょ？ゴールデンウィークは！」と答えてしまった。この連休に、大人の用事は入っていなくて、いつもの同級生との飲み会も、皆の事情でなくなった。出荷だけはしっかりと入っているが、このところ出荷ばかりで、畑作業が滞っている。畑仕事をしたいのだ。

　子供たちは、部活動とか、通常の予定に毛が生えた程度の連休になりそうだし、誰も遊びに連れてって、とは言ってこない。５月５日に、地元のおじさんたちの子供の日の催事があるので、それを楽しみにしているくらいのものだ。もちろん、長男からサッカーの相手をしてくれという要望が頻繁にあるだろうし、子供たちの何人かが家にいれば、それなりの用事も出てくるだろう。でも基本は、出荷と畑仕事である。ああ、伸びてきた草も駆らなければいけなかったっけ。

　年齢を重ねると共に、集中力を駆使して脇目もふらずに仕事をこなす、ということができなくなってきた。雑用は山ほどあり、それらをこなせば時間が過ぎていく。ひとつひとつの仕事は、丁寧にやらないと気がすまないようにもなっているので、やはり時間が費やされる。経験という蓄積された眼力が、畑での余分な仕事を増やさないようにはなってきているけれど、畑を歩けばやりたい仕事は際限なく出てくるものだ。

　朝、収穫していると、ウグイスが鳴く。美しい鳴き声がエコーを掛けたように響く、何度も鳴く。どこで鳴いているのかはわからない。耳を澄ませば、聞いたことのないような小鳥の鳴き声も聞こえてくる。洗濯物を干していると、アマガエルよりも大きなカエルが全身を白っぽくして、物干し竿で陽を受けていた。思わずビデオカメラを取りにいってきて撮影する。時間を早く回したような生活をしているのに、その瞬間には時間が止まる。そう、この初夏の晴れた日には、生命は躍動し、そこここにエネルギーがみなぎっている。木々は芽吹き、草は伸び、虫たちも活発だ。そのひとつひとつが、都会の方たちからすれば貴重なものかもしれない。そのことを堪能できる世界に生きている。

　苗床の横の草を鎌で刈った。苗達の育つ場所には、毎日水やりに通う。伸びているなぁ、と思ってもなかなか刈ることができずにいた。汗を少しかいたが、これを放っておけば、草は更に伸びて、汗だくになって草刈りをすることになるだろう。まだ汗だくにならずに済む季節、それがこのゴールデンウィークの頃である。蚊もまだ出てこないので過ごしやすく、一年で一番よい季節、と言ってしまいたくなるくらいだ。確かに、世の中のひとも遊びに行くにはもってこいの季節であろうし、だからこそ、畑仕事にも外せない時期である。子供の日というものも、子供が外で親の近くにいないで自立して遊ぶことのできる日でありたい。

2014年5月1日　寺田潤史

バックナンバーへ

ご意見、ご感想、お問い合わせは、下記よりどうぞお寄せください。

★　ひらく農園の野菜の入手方法

☆　このページの最初に戻る