「楽しいもの、狂おしいもの　その２」

　筋肉疲労を起こしている。足腰はくたびれ果てて、筋肉痛が慢性化しているような状態だ。気候がよくて過ごしやすく、カラダが動くのでついつい休まないでいる。長男のサッカーにも相変わらず毎日付き合ってきたが、とうとう今日は諦めた。それでも、少し横になって眠ってから、部屋の中で長男とボール蹴りをした。部屋用にバレーボールを用意してあるのだ。出荷も、ファーマーズマーケットを一店、今日はやめておいた。足腰を休めることにしたのだ。

　音楽の相棒から電話があった。父親を亡くしたばかりで少し落ち込んでいる。夕方、キャベツの青虫取りをしながら、iPhoneのイヤフォンを使って話し込んだ。話は、生き方と現実、というような話題に及ぶ。彼は、友達に言われるそうだ。「もう少し子供のことを考えろよ」と。子供のために親は犠牲になるものだと。彼は反論したそうだ。「子供は子供、親は親だ」と。彼はまじめな人間だから、まさか子供をほったらかして遊んでいるような人間ではない。簡単に言えば、彼の友達は、もっと稼ぐことのできるまっとうな職業について、自分のことは捨てるに近い形をとれ、というようなことを言っているのだろう。打楽器の講師や早朝タクシーのアルバイトなんかやめて、正社員として働け、と言っているのかもしれない。

　彼はそんなことを言われて動じる人間でもないが、たまには僕の同意が欲しくなるのである。子供を塾に行かせろ、などとも言われるようだ。僕は、子供を持つ前から子供を塾には行かせない方針でいたから、相変わらずに子供を学習塾には行かせたことがない。子供は子供で、友達が行くから私も行きたい、という思いは持っているようだ。ああ、そろばん塾だけは上の子供たちを少し通わせた。僕自身がそろばん塾に通った経験があり、後年、学生の頃のアルバイトなどで大変それが役に立ったので、そろばんだけはやらせたかったのだ。それに、右脳を使い、イメージトレーニングにもなる。しかし、四女からは行かせていない。金銭的余裕がないのだ。でも、ピアノを習わせたりしているわけだから、やりたいことはやらせているのかもしれない。

　自分の信念を貫いて、一生を生きていくのは、とてつもなく大変なことである。うまく物事が行っている時には、人はちやほやしてくれるが、うまくいくことなどほとんどラッキーなことであるから、大抵の時間は、人様の批判の的になるか、忘れ去られるか、はたまた便利な道具となるかであろう。でも、子供たちを見てほしい。自分の好きなことをやっている時の、充実した目つきは、やはり、子供はやりたいことをやるために自分の意思で生まれてきた、と教えてくれる。やりたいことをやらせるのが僕の使命だと言っていいかどうかはわからないが、子供に信念を貫いて生きていってほしい、とは思う。信念を貫くことは、人を知ることにつながるからだ。

　子供たちは、僕のお金のなさを見て、貧乏にはなりたくない、と思っている。お金を得ることと、信念を貫くことが、別のことだといつか思い知るかもしれない。鍛錬の継続の充実は楽しさにつながり、狂おしいものは個人的なものであること、そして、それらは表裏一体、清濁併せ呑むことでもある。筋肉疲労を起こしてまで畑仕事を続け、それでもギターのトレーニングを続ける僕の馬鹿さ加減を、いつか理解してくれるかどうなのか？

2014年5月15日　寺田潤史

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