「積み重ねを応援する」

　一週間かけて、少しずつ休んで筋肉痛を治めた。夜なべはしないで、睡眠を多くとった。草が伸びているが、刈払い機を一度にどっとやらないで、少しずつ草刈りを進めている。草を刈ると、心もすっきりしてくるから、何となく疲れもとれてくるようだ。遅々として進まない畑作業を憂う気持ちは変わらないが、ほんの少しでも歩が進むことを安堵としている。

　四女のピアノの発表会がひと月後へと迫り、あまり練習に精を出さない四女のために、練習表を作った。四女は日没前になると、下の弟（長男）に呼ばれて、駐車場で一緒にサッカーをやる。義務感のあるピアノの練習よりも、サッカーをしていたほうが楽しい、という顔をしている。そこで、長男にもサッカーの練習メニューを表にして渡した。同じような表を元に、長男と四女がライバル心を燃やして競う気持ちをけしかけたのだ。

　サッカーの練習メニューは、細かく箇条書きしてあり、毎日すべての項目に丸をつけるようになっている。たとえば、リフティングしてそのままシュート１０回、とか、マーカーのジグザグドリブルをアウトサイドキックのみ使って２タッチで１０往復、というように、右左別々の足で１０数項目という感じだ。まだ今日で４日目だが、回数を口で数えて、長男はきっちりとメニューをこなしている。サッカーが好きだからできるとはいえ、８歳でそこまでやるんだなぁ、と半分呆れている。そのような課題があったほうが歩を進めることができやすい、という性格なのだろう。それまで一人の練習が苦手だったが、メニューがあれば一人でも練習できるのだ。

　小学生の頃、僕は野球（ソフトボールも含めて）ばかりしていた。夏休みで大会が終われば、いつも壁にボールをぶつけていたものだ。親父が僕を相手にキャッチボールをすることなど、ほんの１ヶ月に１回あるかどうかくらいのものだった。それと比べれば、長男とは毎日サッカーをしているのだから、ね。でも、子供というものは、余分なことは考えないで、サッカーならサッカーのことだけを考えていられる生き物だ。真剣な眼差しに、こつこつと積み重ねる努力を覚えることを加えたなら、将来サッカーでなくてもつぶしが利くようになるかもしれない。こつこつと積み重ねるのは地味な作業だから、見守ることや一緒にプレイすることは手助けとなる。

　夜は、テレビでなでしこジャパンのアジアカップ準決勝を見た。男子サッカーとはスピードや激しさなどが違うが、子供のサッカーに接していると、見方も変わってくる。あのようなプレイはそう簡単にできるものではないし、女子のサッカー人口が多くなかった頃から、地道に練習を積み重ねてきた彼女たちは、本当にサッカーが好きなんだな、と伝わってくる。地道に自分を信じてひたすら取り組むことは、人を騙してばかりいる方々や紛争を繰り返すことと次元の違う透明感を感じられる。サッカーだって一種の騙し合いであるし戦いであるのだが、それらは個人の日々の気の遠くなるような真剣な積み重ねがあって初めて出来る戦いだ。

　ハーフタイム、ベトナムからの中継をそのまま見ていると、メガネを掛けた中年男性が焼き鳥を食べているところが映し出された。うん？うん？あ、あれは、Ｎじゃないか！ベトナムに単身赴任で工場長をしている友達（高校の同級生）が客席にいた。

2014年5月22日　寺田潤史

長男自身のメニューチェック

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