「積み重ねを応援する　その２」

　長男のサッカー練習メニューの表には、鉛筆の丸印が並んでいる。それを見ていると、一途な少年の心に寄り添ってあげなきゃな、と心情が湿っぽくなりそうだ。畑の隅から、駐車場の彼の練習風景をそっと見てみる。けなげな練習風景とも思えるが、８歳が一人で練習していると、どこかで元の練習の仕方と変わってくることがある。マーカーの幅が違うだろ？と思わず口にしている。放りっぱなしではダメやなぁ、少しだけでも毎日目をかけることも必要やなぁ、と思う。

　僕は、単なるサッカー好きである。音楽のことなら、単なる音楽好きとは言えないので、少しはディテールがわかるかもしれないが、サッカーのディテールはわからない。走り方の足の角度とか、ステップの細かな踏み方とか、専門外のシロウトだ。今は、インターネットに情報があるし、動画は数限りなくある。僕が高校生の頃に今の環境があれば、たった数ヶ月でサッカー部をやめるようなことはしなかったかもしれない。あの頃、僕がやったことは、家でリフティングを１００回できるようにしたことくらいだ。それに、気持ちは音楽のほうに傾いていた。今、長男の練習方法を、動画などを参照して提示することはできるが、長男が練習して面白いと感じなければ続かないだろう。あとは、週２回のサッカー少年団のコーチが、指示してくれるだろう。

　長女のホルンは、高校生としてはもはや専門的な領域に達している。クラシックの世界でもあるので、僕もおいそれと口出しはできないのだが、ほんのたまには悪い癖を指摘したりする。そのような部分があっては、希望の大学には入ることができないとわかっているからだ。ただ、何よりも、長女の学校にはホルンの専門家の先生がいて指導してくれる。だから、練習以外の全般的なサポートが親の役目だ。

　長男のサッカーの練習は、一人でもできるが、サポートがあれば格段に違ってくる。シュート練習なんて、受けるキーパー役がいるだけで、何倍もの練習が可能になる。それに、子供の意欲が断然違ってくる。８歳なんて、まだまだ甘えん坊で、親に見ていてほしいという気持ちがとても強い。昨日は、夕方からトラクターに乗り出したので、長男は一人でメニューをこなした。暗闇の中、１９時半頃家に戻ると、長男はサッカーをやりに出てきた。照明をつけて、しばらくシュート練習に付き合った。今朝、これを書いていると、学校へ行く前の長男が、また僕を呼びに来た。昨日に引き続いて、朝のシュート練習をするのだという。

　朝晩、サッカーの練習に付き合うようになるとは、数年前には考えもしなかった事態だ。長男が５歳になる前の保育園年少組を終わる頃、サッカー少年団に連れて行ったのは、エネルギーを持て余し気味の長男には、スポーツをやらせたほうがいいと思ったからであり、サッカー少年団では同級生がコーチをしているので、連れて来いと言われていたからだった。だが、その時は監督に断られた。せめて年長組からにしてくれ、と。それが今では、サッカーの練習が毎日の日課になっているのだからね。楽しいからサッカーをやっている長男だから、半分遊びに付き合っているようなものかもしれない。去年のクリスマスプレゼントに作った、鉄製のサッカーゴールのバーが、今日も長男のシュートを跳ね返している。

2014年5月29日　寺田潤史

自作サッカーゴール

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