「ムカデにやられる」

　梅雨入りして、すぐに暴風雨となったこの６月の雨は、どんな夏を持ってくるのだろう？と思っていると、梅雨入りしてすぐに、もう梅雨の晴れ間のようなお天気になってしまった。テレビでは、大雨の惨状と、今後の大雨予想を報じているのに、昨日はたった３ミリの雨。今日は東風が強く吹いて入るが、時折青空が見えるくらいで、雨は全く降っていない。

　梅雨入り前に、いんげんの種を播き直して、畑でサンサンネットを畝に被せる作業をしていた。そこに、激痛！？強く噛まれたような刺されたような、蜂にやられた！と思った。それにしても痛い。連れ合いの恭さんを呼んで、朝顔の葉を揉んでもらって、患部の右手薬指の先に押し付ける。やられた場所に戻って、サンサンネットをたぐってみると、大きなムカデがいた。蜂ではなかった。

　あまりに痛いので、横になって安静にしていたが、一時間たっても痛みが治まらない。恭さんがネットで検索してみると、対処の仕方が書いてある。いつもなら、自分でネット検索して、対処の仕方を考えるのだが、痛くてその気にならなかったのだ。痛みがおさまらなければ、かかりつけのお医者さんに行かなくちゃ、だ。ネットに書かれていた記事は、４２度から４６度のお湯に患部を浸して毒を洗い流す、というものだった。

　早速、お湯を沸かしてもらって、温度計で湯の温度を図りながら、石鹸水で指を洗いながら、お湯に浸ける。熱い。４３度ではもう熱くて、ずっと浸けていられない。４２度ぎりぎりで２０分ほど、時折熱湯を継ぎ足して４２度を維持した。あれほど痛みがあったのに、あっけなく痛みは去った。数時間後には、ほんの少し腫れていた指も元に戻った。いやいや、ネット検索恐るべし、だ。

　なんでも、ムカデの毒が指に残っていると痛むらしい。その毒は４２度以上で死滅するらしいのだ。そういえば、薬指に激痛が走ったのに、くっついていた中指も少し麻痺したような痛むような印象だった。ムカデの毒が照射されて、中指のほうにも付いていたのだろう。熱消毒が効くとは、ね。火傷には注意しなければいけないから、温度計で監視するのは必要だが、こんなにも簡単に痛みが取れるとは、人の知恵は素晴らしい。

　いんげんは、このところ毎年６月に来る台風でダメになっていた。いんげんの種を播いて、すぐにムカデに刺されるなんて（噛まれたのかもしれない）、いんげんはあきらめなさい、君の仕事は徒労だよ、と言われているような気になっていた。しかし、こんなに早くあっけなく痛みが治まると、いやいやいんげんの種を播いたのは正解だよ、と背中を押されているような気分にもなる。人の気持ちは、痛みと直結しているらしい。痛みの原因がわかることの、何ともスッキリとした気分は、前向きさを取り戻してくれる。

　梅雨入りしてすぐの梅雨の中休みのような晴れ間は、梅雨入り前と同じように井戸水を畑に散布することを躊躇させない。植え付けてすぐに虫に食べられてしまった場所に、もう一度葉物を植え付ける。とにもかくにも、粘りである。七転び八起きだね。

2014年6月5日　寺田潤史

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