「ワールドカップサッカーブラジル大会」

　梅雨入り後、一週間たっても、やはりテレビでは大雨のニュースを報じていて、その地域が移っているようだ。ところが、いまだにこちらの地方では、雨が少し降っただけのままで、明日以降の雨の予報もいつのまにか消えている。長男のサッカーの練習が滞るということが２日程度であったのだから、梅雨とは思えない状況だ。

　いよいよ明日からサッカーのワールドカップが始まる。４年に一度というのは、とてつもなく長いような、あっという間のような、しかしながらオリンピックとは違って待望のワールドカップであるのは、単なる僕の嗜好であろうか。「ああ、今年はオリンピックの年か」と思い至ることと、予選を何とか勝ち抜いて勝ち抜いて、待ちに待ったワールドカップ、というのとでは大きな違いがある。４年前の南アフリカの時には、長男はまだサッカーを始めていなかった。

　今までのワールドカップとは、今年は趣が違う。第一には。多くの日本選手の活躍で欧州サッカーを日常的に見ているということがある。第２には、ここ２年ほど毎日のようにサッカーボールを蹴っている、という現実がある。その現実とワールドカップのテレビ観戦とは全く別物であると言えるが、サッカーボールを蹴っているということは、どこかリアリティのある現場をテレビ観戦に持ち込むことになる。簡単に言えば、長男とワールドカップを見ながら、「あんなことできる？」とか「あれやってみよう、今度」などという会話をすることになる、ということだ。

　ワールドカップ本番前の最後の強化試合、日本対ザンビア戦では、最後のロスタイムに、交代したばかりの青山選手が得意のロングボールをゴール前にピンポイントで蹴り込み、大久保選手が最高のトラップをして左足シュートを決めたのだった。僕は長男に向かって、「あんなトラップできるけ？」と興奮して言ったのだが、その日の夕方には、早くもその練習を駐車場でするようになった。題して青山大久保練習である。大人からすればロングボールではないのだが、長男からすればロングボールになるようなキックを僕がゴール前に蹴ると、その前から走り出していた長男がトラップしてシュート、あるいはボレーシュートを蹴り込む、という練習だ。

　サッカーというものは、９０分戦ったとしても、実際に一人がボールに触っているのはほんの数分程度である。後の大部分は走っているのだ。つまり、サッカーというものは、走りながらボールを蹴ったり止めたりするスポーツなのだ。あの大久保選手が、ゴール前のスペースに走りながらボールを自分の良い場所に置き（もちろん相手に奪われない場所でもある）、シュートをする、あの場面を見れば、走りながらの練習をしなくちゃ意味がないと理解できるのである。

　８歳の長男は、はじめてワールドカップサッカーを見る。正確には、ワールドカップがどんなものか把握していない模様だが、参加国の試合日程を書いた紙が貼ってあるので、それを見て国の名前を憶えているような状況だ。普段欧州サッカーを長男も見ているので、個々の選手のことは結構知っているようだが、クラブチームと国との関係が今一つ整理できていないようでもある。まあ、ワールドカップを子供と一緒に見る日が来るとは、ね。青山大久保練習もそうだけれど、ほとんど遊んでいるような、そうではないような…。

2014年6月12日　寺田潤史

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