「何をやってもダメな夏」

　残暑なのか暑中なのか判別できないほどに、暑さに辟易している。西日本の集中豪雨のような雨がないのはラッキーかもしれないが、雨は台風様が持ってくるほかはない、というこの地方の特性は、生まれながらにしてアンラッキーな土地柄である。人は、もっともっと長いスパンで物事を考えなければいけないよ、と先人たちはつぶやいているかもしれない。ツイッターなどではなくて、雲の上から「１００年単位の統計を積み重ねてごらん」とつぶやいているかもしれない。１０年単位でしか捉えられない僕は応えて歌うだろう。「僕は何をやってもダメな男です」と。

　夏は仕事をしてはいけない、のかもしれない。しかし、出荷はもう数ヶ月は休んでいない。出荷ではなくて、畑作業はしてはならない、のかもしれない。だけど、８月のお盆をすぎれば、秋冬の野菜の準備をしなくてはいけない。その前に、ピーマンやししとうの世話をしていたら、熱中症にやられた。その場では大丈夫だったが、納屋に戻ってから何となく変な体調に気付いた。そのまま仕事を夕方までこなした。夜、熱をはかってみると３８度を超えていた。インターネットで熱中症の症状を検索してみると、見事に当てはまる。足は筋肉通がひどくなり、カラダはほてるし、頭は痛い。アイスノンを敷いて寝た。

　熱中症から２日後には今まで通りに戻っている。１日後でもほとんど平常通りに近かった。２日後から、トラクターに乗った。３日後もトラクターに乗ったが、夜、気管支が痛んで、少し寒気がする。トラクターの排煙を吸ってしまったようだ。よく眠れなかったので、ロキソニンを飲むと、よく眠れ、気管支の痛みも寒気も収まった。応急処置だが、そのまま熱は収まった。

　トラクターの古いものに乗る時には、防毒マスクを付けている。そのマスクのフィルターを交換していなかった。また、そのマスクには鼻の頭の隙間をクリップする金具が付いているのだが、その金具が古くなって折れていた。それをそのまま使ったのがいけなかったかもしれない。今日はそのマスクの金具を修繕し、フィルターを取り替えた。トラクターの排煙を吸って気管支が痛むのは、一種の持病のようなものだと思っている。が、その備えを怠れば、こういうことになる。

　８月のお盆前には、大きなトラクターの作業機を回す回転軸がもげて取れた。フレールモアという草刈り作業機が使えなくなっている。どうもこのところ、仕事をすると、仕事をするな、と言われているような事態に陥る。雑用ばかりで一日が終わる日々は、相変わらず続いている。先人たちは、何かを望んでいるのだろうか？この暑さでは、やりたい外仕事も遅々として進まない。収穫と出荷はもちろん毎日だ。そうして、あっという間に夏は暮れていく。

　この３日間は、４番目の四女と５番目の長男が連れ合いの実家に泊まりに行っていた。おかげでサッカーの相手をしなくて済んだ。３日間だけ上の３人娘となったことは、とても静かな日々に感じた。いつか５人とも家から離れたなら、時間も空間も気持ちも違う感じになるだろう。それが実現できるかもしれない未来には、この暑さ寒さはもっと激しく変動し、ゲリラ豪雨が日常茶飯事になり、終末論が世の中を闊歩するような時代になっているだろうか？楽天的な僕でも、未来を楽観視することはできない、何をやってもダメな夏。

2014年8月21日　寺田潤史

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