台風明けの二日目の朝は、永遠の晴天を感じて一種の安堵と諦めを感じるのが常だ。ところが、昨日の朝は早くも曇り空で、洗濯を急がせる雲行きだった。洗濯物を干そうと思った時には、もう雨の粒が額にお知らせの一撃を見舞う。室内干しの憂き目に空間を奪われたとしても、気持ちを急がせるのは、昨日長女がｉＰｈｏｎｅを壊してくれたからだ。１１時には浜松のアップル修理スポットに到着していたいので、葉ものの植え付けを早く進めたい朝だった。

　２週連続の台風は堪えた。しかも、地元のお祭りを挟んでの１０日間だ。台風はいずれもこのあたりを目指して進んできたので、絶望感が１０日間を包んでいた。一方で農繁期の疲れが、お祭りにかこつけた休養とリセットを要求していたことも確かだ。子供たちはお祭り前のワクワク感を満喫して日を進めようとしていたが、お祭りのことはお祭りになってから考えるのが、ここ２０年ほどの習慣になっている。秋の行事と農繁期の重なる中にお祭りも組み込まれているのだ。

　最初の台風１８号は、ここを直撃する寸前に北へ上がり、慌てて進んでくれたおかげで畑の野菜は全滅を免れた。とはいえ、野菜の収穫は半減した。ここ数年の台風被害からすれば、全滅を免れたことが明るい話題である。明るくないのは、もう一つの台風１９号が追い打ちをかけようとしていることだった。半ばあきらめムードの中で、台風前にお祭りはやってきた。土曜日のお昼から、同級生の家を梯子した。同窓会と違うのは、同じクラスの人ばかりでないことと、肉襦袢に腹掛け、足袋と股引、法被姿のいでたちであることだ。

　途中から数十年ぶりに会った旧友Ｍが鈴鹿から駆けつけてくれ、Ｍが来たからと車でＫちゃんもやってきた。Ｑちゃんも仕事を切り上げて参加した。夜１０時を過ぎて多くが帰った後、いつものＮ宅へＭとＫちゃんと出向いた。Ｎ宅では、１０代の時からずっとお祭りでお世話になっている。出された日本酒が効いたのか、僕はべらべらと饒舌となった。Ｎのお母さんが聞き上手だからなのか、昔からここで話しているせいなのかはわからないが、子供のことをべらべらと。

　いつになくしゃべり過ぎたような気がしたまではいいが、翌日の朝は二日酔いで、しゃべり過ぎたことが自己嫌悪のように僕を苛む。昼まで寝て、畑に出て収穫をし、苗の水やりをやって、しんどくてまた寝た。お祭りはお酒がすすんで次の日のカラダが大変になり、それゆえにお祭りは嫌いになりそうだ、と去年も思ったものだ。ところが、夕方になるとカラダが回復し、嫌いになったはずのお祭りにまた出かけていく気分になる。子供たちのために、風呂を沸かして（薪だから時間がかかる）、ようやく夕闇に２３台の山車と祭りに興じた人々のひしめく街に出向いた。

　台風１９号は、大阪から名古屋に降りてきたが、あっさりとまた北へ進路をとって駆け抜けていった。よかった、と安堵していると、夕方長女から電話が入って、ｉＰｈｏｎｅを落としてディスプレイを割ったと。ああ、また時間を費やして修理スポットに並ばなければいけない。本当に次から次へと、子供たちは何かをやらかしてくれる。台風に振り回され、お祭りでリセットしたのも束の間、すぐに子供に忙殺される。僕自身は、いったいどこへ行ってしまったのだろう？振り回されることも楽しんでいるつもりではあるけれど…。

2014年10月16日　寺田潤史

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