あっという間の一年だったと、この数年、いやこの二十年ぐらいは毎年の瀬に思う。年々その暮れていく速度が早いのには驚くが、それが年を重ねたということなのだろう。あまりに早すぎて、一年の総括も何もあったもんじゃない、という気もする。でも、総括しないと来年に進めない気がするので、恒例に従う。

　何と言っても、今年は長女の進学が決まった、というつい最近のことが一番の出来事だ。まだ今年は終わってはいないが、終わり良ければすべて良しとしたい気分だ。この三年半の思いを具現化した出来事で、子供のしたいことをさせて、子供の納得する進路を導いたすべての流れに感謝したい。一番上の子供というのは えてして甘やかして育てがちだと思うけれど、お姉ちゃんなんだからしっかりせえや、と育てるとなかなか自分の本当にやりたいことを見つけられずに成長してしまう危惧がある。長女も中学三年になってはじめて自分の将来のことを考え始めたのだから、その危惧通りになりそうだった。

　それをこの三年半で覆して見せたのは、私立高校の師匠を選んだことだけでなく、親子の徹底的な対話で意思を確認しながら進んだことも大きな要因だ。私立高校に入学したばかりの頃、僕は長女に言った。高校三年生になってからでは遅いから、二年生のうちに賞を取れ、と。そして今年の一月に奨励賞を頂き、二年生最後の三月末になって、コンクールで一位と三位を貰ったのだ。その時には、まだとりあえず目標を達成したに過ぎなかったが、それが今回の進学決定に影響を及ぼしたことは間違いない。

　一口に、賞を取れ、と言ったって、全国大会で上位の成績をおさめることが大変なことは誰にでも想像がつくだろう。それを成し遂げるためには、日々の積み重ねがモノを言うが、それをさせるのは尋常でない。もちろん、僕がそれをさせたところで、結果は目に見えている。本人の意思がそれをさせるのだが、高校生が一年三百六十五日を強固な意志で押し通すことは困難である。そこを口八丁で継続させるように促すのは親としても根気のいることだった。正直に言って、子供に好きなことをやらせるのはいいけれど、それを形にするのは初体験である。下に四人の子供たちがいるので、雛形を作る、という意味で面白い作業ではあるが。

　子供は長女だけではない。お姉ちゃんばかりにお金がかかる、と下の子供たちの声もよく聞いた。だから、下の子供たちにも好きなことをやらせている。漫画家になるために美術科のある高校へこの春入学した次女は、あっという間に油絵の虜になって、行かないはずだった大学進学を口にするようになった。パテシェールになりたい三女は、農業高校の食品科に進むつもりだが、なんちゃって卓球部ではくじ運よく新人戦団体で県大会に進むことになった。他の四人が好きなことに夢中になっているが、四女のサックスは、楽器を買った割には興味が続かない様子だ。サッカー選手になりたい一番下の長男と、この一年もほぼ毎日サッカー練習に付き合った。長男をサッカー選手にさせるのはやっぱり至難の業だが、それくらいの大きな楽しみがあってもいいだろう。つまるところ、子供に終始した年だった。とほほ。

2014年12月11日　寺田潤史

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