畑の日常、家族の日常、あるいは地域の日常、それらの風景を切り裂くかのように、テレビニュースが日常に緊張感を与える。現代ならではの、非常に奇妙な事象だ。まるで、その場の当事者のように事件を見守ろうとする自分がいる。考えてみれば、スポーツ中継でも、そのリアルタイムの試合を真剣に応援する自分を発見することができる。しかしながら、自分の応援するものの勝利を願い良いプレイに熱くなるようなことと、戦争状態にあるような地域での人質解放を願うこととは、やはり質が違う。スポーツの応援には慣れていても、戦争状態には慣れていない、という事情もあるのだが…。

　一方で、また未成年女子による殺人事件も起きて、僕の頭の理解を超えて、うーんとうならせる。去年の九州での事件もそうであるが、必ず事件の起こる前段階までの予兆というものがあったと思う。つまり、子供の頃からの積み重ねがあったはずで、親はどこかで抑止あるいは方向付けを怠ったのかもしれない、と感じた。僕の子育ての中には、やはり人を殺すような人間に育ってほしくない、という明確な意図はある。合法性以前の、人間的にそう考えるのは恥ずべきことだと感じてほしい、と願う。

　子供というものは、単純なものの積み重ねである。その積み重ねは、常にほぐしてあげないと手遅れになることがある、という危機感を持っている。うちのように五人の子供がいると、必ず誰かと誰かがいさかいを起こしている、と言ってもいいくらいである。あるいは、僕や連れ合いに怒られているか、だ。夕方五時には仲良くしていた二人が、夜八時には最悪の間柄であることは茶飯事だ。それが単発の事象であれば、僕は放っておくことが多い。しかし、例えば、連れ合いに怒られた後に、誰かと喧嘩して涙を流し、さらにほかの誰かと喧嘩してオイオイと泣き止まない、そういう状態になれば僕は介入する。原因は単純でも、複合されていくと当事者の心持ちは自分で修復不可能な状態になっているからだ。

　人は、満足を積み重ねていくほうがいい。その満足は小さいほどよい。満足は細胞のようなもので、満ち足りたものはそれで完結しながら隣の満足に影響を与える。その満ち足りた状態を積み重ねることが、小さな不満足を容認する性質を生む。小さな不満足をたくさん抱え込むと、不満足と不満足が連結して、不思議で大きな不満足となる。それはもはや修復不可能に近い状態へと進化している。小さな不満足のうちに、その原因を探って一緒に解決しようと試み、次の満足できそうなことを探そうとすれば、それは満足への足掛かりとなる。それらは、親の役目の一つだと思う。

　目の届く範囲での親子関係の味というもの、それが必要だなぁと思う。それが理解の範疇になるのかもしれない。子供の意志が、たとえば銃に向いていたとすれば、それを工作の方向に向かせたり、あるいは歴史の方向に向かせたり、射撃というスポーツに向かせたり、やり方はいろいろあるのではないだろうか？その子供なりの意志というものを、親子関係の味の中に落としこんでいくことで、楽しい未来に繋がればいいなと思うのだ。

2015年1月29日　寺田潤史

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