暖かな晩秋も、冬様の到来にあえなく退散。こうして季節は守られていくのか？季節が季節通りでない違和感は解消され、太陽から遠ざかるという物理現象と気候が密接に絡み合って、この国の冬が始まる。

　冬の到来前に済ませておかなければいけない事の一つに、サツマイモの掘りあげがある。９月からサツマイモの収穫は始まっていた。もっぱら掘りあげ担当は連れ合いである。日没前の時間を確保できたときに、彼女はシャベルを使ってサツマイモを収穫する。一度に１コンテナだけ。たまに僕も掘りあげる。固い！土が固くしまっている。この土は、機械掘りすら受け付けなかったつわものである。とはいえ、おいしいものが収穫できるのであるから不思議ではある。

　１１月は気温の下がる季節であることは昔から同じであったが、今年は暖かかった。それは、サツマイモの収穫にとってラッキーであった。慌てて収穫を終える必要がなかったからだ。一気に掘り上げるには、トラクターを使って土を動かす方法があるのだが、そのトラクターがどういうわけかエンジンがかからなくなった。バッテリーを充電してもダメ。バッテリー駅を補充し、再度充電しても、セルモーターが回らない。

　先の日曜日、連れ合いと長男がサッカーの試合でいなかった。出荷はこなさなければいけないが、植え付けもしたいし、サツマイモも掘りたい。よくよく考えて、もう一度トラクター修理に時間を使うことにした。ファンベルトを調整し、ヒューズを確認し、電気系統をチェックする。機械の洗浄スプレーも使って、電気系統の接触不良がないか掃除していく。ある程度のことをやって、ああ、時間を費やしてしまったなぁ！と、もしかすると無駄なことをしてしまったかもしれない、という危惧がよぎる。イグニッションキーを回してみた。一発でエンジン始動できた。おお、奇跡や！早速、作業機を外して、ソイラーを取り付ける。

　さつまいものつるを切り、トラクターで畝をまたいで、さつまいもの脇の土をさらっていく。あんなに固く閉まっていた土が、さらさらと崩れていく。土を動かすという難儀な仕事は、少ない量なら楽しみもあって良いが、たくさんの量では機械に頼ったほうがいい、と思う瞬間だ。一気に掘り上げると、コンテナの数もたくさんだし、力仕事が集中することにもなる。だが、冬様の足音が刻一刻と迫っているのである。

　もしあの時、トラクターの修理に粘りを見せなかったら、その時間は遊んでいたことと同じになる。修復すれば、その時間は有効になる。農の仕事には、そういったお金にならないような仕事で、結果的に時間を無駄にしてしまうことはいくらでもある。それらの無駄もまた仕事だ。野菜だって、多めに作付けするから全て収穫できないこともある。すべてを有効に、効率よく、そんなことはありえないのだ。一見して無駄なようなことを、小さく積み重ねていく。特にこうしたお天気様を相手にしていく作業では、心の何処かに楽観を持ち合わせていないと続かない。そういうものなのだ。考えを巡らしながら、なるがままに行動しもがく。うまくいけばラッキー、いかなきゃアンラッキー。そしてまた考えを巡らすのだ。

2015年11月26日　寺田潤史

バックナンバーへ

ご意見、ご感想、お問い合わせは、下記よりどうぞお寄せください。

★　ひらく農園の野菜の入手方法

☆　このページの最初に戻る