あっという間に年が暮れて、２０１６年が始まった。３１日まで出荷をして、元旦の朝の気温を見たら５度程度と高かった。これなら強い霜は下りていないはずだからと、元旦も出荷することにした。３１日夕方に２箇所ショッピングモールに持って行った水菜はあっという間に完売だった。両方のお店自体に水菜がないような状態になったのだ。

　この地方独特の、お雑煮に水菜を入れる習慣は、暮れのいろいろなお店で水菜争奪戦の様相を見せる。ところが、この冬は暖かいので、水菜が豊富にあるようだった。うちの畑では、今年は水菜がそんなに豊富なわけではない。だから、無理して出荷をすることもないなと思っていた。むしろ、正月飾りの争奪戦が繰り広げられていたので、正月飾りをたくさん出荷した。ところが暮れになって、やはり水菜が不足してきたのだろうか？

　元旦の朝、ショッピングモール２箇所に水菜を出荷して、おふくろと兄貴の住む家でお雑煮を食べた。毎年恒例の家族揃っての挨拶である。その時に、おふくろが他の店で買ってきた水菜を見せてもらった。巨大である。水菜の茎の白い部分がグーンと伸びて、その先に青い部分が少し付いている、そんな巨大な水だった。秋冬の暖かさが野菜の成長を促し、慣行農家では化学肥料と相まって更に成長を促し、そのようなものになってしまうのだろう。お雑煮にのる繊細な水菜のイメージは、やはりうちの水菜のようなものがいい。

　休みのないまま始まった２０１６年。世の中は少し景気が良いように見える。実際のところは、大企業の景気の良さと、中小企業のプラスイメージのなさと、はっきりわかれるような状態なのかもしれない。元旦の朝の納品時に見た、朝から人で溢れかえるような光景は、僕には他人事のように思えてくる。違う国に住んでいる人、ぐらいの感じだ。その群れを作る人達の、一人ひとりと話せば同じ国の人という感じであるのに、その人達の群れの為す行動は、僕と相容れない感じであるのだ。

　普段、サッカーやニュース以外はあまりテレビを見ないのだが（朝ドラだけは毎日見ているけれど）、大晦日には紅白を見た。元旦に連れ合いの実家から戻って、長女とクラシック音楽のライブを見た。それから、ドイツの町並み探索のような静かな番組も見た。ドタバタのバラエティ、コメントするだけのコメンテーター主体の番組、そのようなものは嫌いなのだが、ドイツの町並みもウィーンフィルの演奏もよかった。たまに良い番組だってあるんだ、って年越しのさだまさいしが言っていたが、そのとおりである。

　そのような普通の年越しをして、一杯やって、二杯やって、静かにまた野菜を収穫する生活に戻る。苗に水やりをする。そのうちにまた種も播くだろう。このように動くことができる、そのことに感謝をし、喜びをかみしめている。長男が連れ合いの実家から戻れば、またサッカーで汗をかくだろう。何ごとかが起きたとしても、ぐっと踏ん張り、修正し、やりなおしていく。今年も絶対に諦めない、そういう年にするだろう。気候の変動が大きいとしても、気候自体に企みはない、あくまで地球の結果なのだから、受け入れるほかはない。

2016年1月2日　寺田潤史

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