いやはや寒い。これぞ冬、という寒さである。暖冬と言われ続けたこの冬に冬らしい冬がやってくることに安堵するが、暖かな冬が突然厳しい冬へと変わってしまった変貌に、からだがついていかない。寒さにも慣れが必要なことを、何日目かの厳しい寒さが教えてくれている。

　一昨日は、こちらでも雪が降った。一瞬、吹雪の様相を見せたくらいである。局地的な１時間程度の吹雪で、すぐに雪は消えた程度の降雪だ。それでも、雪は、何もかもマヒしてしまうことを覚悟させる。東京での１０年あまりの生活経験が、雪に対するお手上げ状態をカラダにしみこませているようだ。あの雪の中の車を滑らせた古い記憶である。今季東京で一人暮らしを始めた長女は、最初の雪にメールを何度も送ってきた。雪に対するあこがれが静岡で育った人の一部にはある。僕はと言えば、雪で畑の野菜を収穫できなくなることを心配するくらいだから、積もるような雪はまっぴらごめん、雪よ降れという子供の夢を打ち砕く存在だ。

　寒い時には、カラダを動かすに限る。ずっと気になっていた納屋の周囲の片づけを一気にする。木を切る。連れ合いは堆肥を一輪車に積み込んで、畑にまく。野菜の収穫は、立ち止まることが多いから、足元から冷えてくる。お日様さえ出てくれれば、意外とぽかぽかと暖かい収穫になるのだが、これだけの寒気であるとお日様も陰ることが多い。ぽかぽかと暖かく感じた時、冬の良い部分を享受したような感覚になって、冬もいいもんだと思う。

　夕方のサッカーはさらに寒いが、からだを動かし始めればすぐに温まる。１対１のディフェンス練習あるいはオフェンス練習をすれば、暑いくらいになってきて汗をかく。汗をかくどころかへとへとになって、ドリブルで長男をかわそうとしても足がシドロモドロになってよろける。そうなると、１対１の練習はやめて、ボレーシュートの練習に移る。僕はロングキックを蹴るだけだから、カラダを休めるのにちょうどいい。その頃には、冬の冷たい風が来ても何の苦もない。　カラダを動かすことは、素晴らしいことだ。長男とサッカーの練習をするようになってから風邪をひきにくくなったが、大腿四頭筋が結果的に鍛えられることになって、免疫力が引き上げられたのかもしれないね。

　カラダを動かさない時には、納屋の薪ストーブをガンガン焚いて、帳簿をする。もうすぐまた確定申告だから、準備を少しずつしておかなくてはいけない。薪ストーブにはやかんと寸胴鍋。夕方のお湯は、子供たちの湯たんぽに入れられることになる。この冬も、家の中は小さな石油ストーブ一つで暖を取っている。子供が自分の机で勉強するときには、湯たんぽを抱えている。我が子ながら、あいつらはよくぞ頑張っているものだ、と思う。やりたいことが定まっていると、少しの暖でちょうどいいのかもしれない。三女は、ケーキを仕込むために台所に立っていれば、もう満足のようでもある。

　畑の野菜は、これだけ寒いとほとんど成長しない。大寒を過ぎて、もはや春に向かい始めたという時期だから、葉ものの種をソロリソロリと播きはじめなくちゃ、だ。春に向かう、その気持が出てくると、前だけを見ることになる。そんな冬もいい。

2016年1月21日　寺田潤史

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