昨日４日は立春。朝の気温はマイナス０．６度。昼間は１０度を超えて、お日さまが照ればポカポカと暖か。今日、お昼現在１１度。いよいよ、春の予感がしてきた。今週は、葉ものの種を播いた。今年最初の種播きだ。もちろんまだ寒いから、苗を育てるための種播きである。こうなると、気持ちは俄然、前へ前へと傾斜する。春というものの最大の利点が、気持ちの前傾姿勢なのである。年度が変わる４月頃の新鮮な春の空気とは違う、長いトンネルから抜けて前に向かう気配だ。

　三女の就職が決まった。これは、三女にとっても僕にとっても、とても嬉しいこと。中学卒業で就職、という初体験を味わう。高校へ行かなくて良いのか？と本人の意思を何度も何度も確認しながら、夏から面接を重ねてきた。まだ中学生だから、制服姿の三女と一緒に、僕が面接に同行した。洋菓子店では、どこへ行っても、どこへ電話しても、高校を卒業してからにしてください、と言われた。高校を卒業してからならどうぞおいでください、とほとんどのお店で言われもした。スタッフの空きがないと断られたお店もある。

　高校の同級生の友達に相談すると、いくつかを紹介してくれた。そのうちの一つが、今回決まった洋菓子工場である。工場と言っても、手作りで洋菓子を作ることに変わりはない。ただ、その作る量が多いのだ。面接に二度行って、実地体験も二日させていただいた。ケーキを作ることでも箱詰めすることでも、本人のやりたい仕事なので苦にならないどころか、楽しくて仕方がないようだ。

　これから、何人ものスタッフのお姉さんたちや大勢のおばちゃんたちの中で揉まれていく。会社では、はじめて中卒者を採用するということで慎重になった様子だが、しっかりサポートしてくれるとのことだ。法令を順守することに気を使ってくれる会社でもあるので、親としても安心だ。そして、やはり本人がやる気を大いに持って臨む訳だから、本人の生活態度の成長が平行して期待できる。

　それでもまだ一五歳。大人の世界には程遠い世界にいるのである。ゆっくりとした歩みもサポートしなければいけないね。三女の同級生たちはまだ、私立高校の受験が終わる頃だ。四年前の今頃は、音楽高校単願の長女が先の見えない未来を不安に思っていた頃だし、二年前には次女が公立美術高校単願の受験勉強をしていた頃だ。その姉たちよりも一足先に就職し、大人の社会に入っていく。数年前には、このような歩みを誰が想像できただろう？それも本人の意志なのだ。

　本人の意思を、親がサポートすることと、親が反対をすることでは、本人の道はまるっきり変わっていくだろう。親が反対したほうがよかった、というケースもたくさんあるだろう。今回僕がサポートしたことは、面接の段取りのほかに、反対した祖母などを見守ること（説得ではなくて、そのような状況を前向きな状況であると何となく土壌作りしていくことかな？）、そして、その道を行くなら厳しい道だよと伝えながら、毎日のようにケーキを作れとけしかけたことくらいである。春に向かって、三女もまた前傾姿勢なのだ。

2016年2月5日　寺田潤史

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