カラダが動く、ということは何と素晴らしいのだろう！と思ったのは、風邪が治って二，三日だけのことで、仕事が山積みされていて、何から手を付けてよいかと、思案するだけで時間が経過する。そして、ひとつ、またひとつ、と仕事をこなすにしたがって、さらに時間の速度が上がってくるから不思議である。

　昨日は、少しだけ家から離れている「たーた畑」に行ってきた。梅がもう咲いている。二本の梅の木があるだけなのだが、うすいピンクの花の樹と、白い花の樹が映える。お菓子作りの杜屋さんに任せっきりになっている柑橘類の果樹畑は、旺盛な生育とは違う、風害つまり台風の潮風の影響を色濃く残している。この潮風の吹く地での果樹栽培は、やはり困難なのだろうか？ましてや無農薬栽培で樹を枯らしてしまうような虫を、テデトール作戦オンリーでは困難は増すばかりだ。

　「とーと畑」の果樹もとことん台風にしてやられている。唯一、大きく頑強に育ったプラムすら、大きく広げた木の枝のほとんどを新芽の出ない花のつかない枝にされてしまっている。たった一本のプラムからたくさんの量のプラムが収穫できたことが、今や懐かしいことになっている。ここはひとつ奮起して、このプラムの樹を「たーた畑」で復活させたいところだ。

　さて、どうやるか？ここのところ数年は、野菜のことしか頭になかったので、果樹畑をイメージすること自体が新鮮な気持ちだ。このことは大事なポイントである。新鮮な気持ちになるのは、熟練していないことを意味し、また新しいことを始める未知の光に満ちている。試しに、長男に何の果物の樹を植えたい？と質問してみる。「ぶどう、りんご、桃！」などとこんな暖地の海岸端の無農薬栽培ではとても無理なことを言う。そういえば、就農したての頃、この家に来て、今は他界した祖母たちが植えた桃の樹が何本もあったっけなぁ、と思い出す。祖父祖母は農薬も使っていたから、樹も枯れずにすんでいたのかもしれないし、実も収穫できたのかもしれない。その後数年は僕が無農薬で受け継いだが、今はもう１本も残っていない。美味しかったなぁ。

　日当たりだけは抜群によいので、果樹の密植栽培か、あるいはアカシヤなどの早く生育する性質の樹を、暴風林の替わりに何列か植え付けるという方法か。支柱も木の杭でなくて鉄製のアングルを使う、という方法も考える。大きな溝を掘る、という手もある。アカシヤは、その昔、福岡正信さんが肥料木としても使っていたから、僕も就農したての頃に真似をした。何本か育って巨木になったものもあったが、台風の大風ですべてやられてしまっている。それでも、アカシヤの花は綺麗で、ファーマーズマーケットでもよく売れたものだ。

　果樹の品種選びも重要になるだろう。現代風の甘いモノは、虫にもやられやすい。プラムならやはりメスレーかな？杜屋さんの話では、レモンは割合良いという話だったが、品種をまた調べなくちゃ。草生栽培となるから、その下草の種類もこの地にあったものにしなければいけない。どちらにしても、海岸端の潮風にやられることを前提としなければいけない。はじめから困難であることを承知でやるのだから、調べ尽くすことは重要だ。

2016年2月18日　寺田潤史

白加賀

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