桃の節句である。昨日、お雛様のあの梅の花はどうやって描く？と三女に訊かれて、一瞬頭の中が白くなってしまった。梅の花？もう終わっているでしょ？え？いやいや梅じゃないでしょ、桃の花でしょ？桃の節句というじゃないの！と頭を整理しながら三女に答えた。三女は、ひな祭り用に、ひし形のケーキに花びらなどを描こうとしていたのだ。

　今日は、公立高校の受験の日である。三女は、昨日の受験前日に合わせて、アイシングクッキーで受験のお守りを描き込んで作り、友達たちに配っていた。とても好評で、気をよくしてその延長として、今日の桃の節句用ケーキも作ったようだ。こう書くと、受験もしないで就職が決まってのんびりしたもんだ、と思うかもしれない。実は、この一週間、我が家は大変だった。長男がインフルエンザＡ型にかかり、次の日には連れ合いがそのＡ型をもらい、その翌々日には、四女がインフルエンザＢ型になってしまったのである。

　ちょうど高校二年生の次女が期末試験の時期で、絶対にインフルエンザに私はうつらない、と次女は力説した。大学を特待生入学するためには、学校の試験も常にトップクラスでないといけないからだ。三女も、みんなに受験のお守りクッキーをあげるんだ！と気合を入れ、何がなんでもインフルエンザにかかるわけにはいかない、と同調した。テレビのある居間にインフルエンザ組が集結したために、健康組はテレビすらみることができなくなった。隔離したのがインフルエンザ組なのか健康組なのかよくわからない状態になったのだ。

　仕事の合間を縫って、食事の世話や衛生面のケアなどに時間を割き、かと言って無理して僕自身がインフルエンザになってしまっては、さらに深刻な事態になり仕事どころではなくなる。家の中でだけマスクをして、外に出るとマスクを外すという奇妙な非日常になった。ここのところ数年、家族の誰もがインフルエンザにかかっていない。しかも、Ａ型とＢ型が混在する。小学校で流行っているインフルエンザに両方の型があり、別の感染経路でうつってきた。両方のインフルエンザにかかる人もいるというから、また妙に気を使うのだ。

　結局、一週間近くかかって、収束に向かった。次女と三女の「絶対にうつらない」という執念には驚いた。折しも、畑の作業は忙しい時期に入っている。葉ものを植え付けたり、種を播いたり。しかし、無理して疲れをため込むわけにもいかなかった。なんとか乗り切って安堵であるが、仕事は目白押し。確定申告すらまだなのだ。

　長男とのサッカーの練習も、一週間のお休みとなった。長男にはちょうどよい休息になったと思う。彼はとにかくよく眠ったから、身長が伸びてくれればいいなと思ったくらいだ。連れ合いにとっても、良い休息になったろう。これからの農繁期、夏の暑さなどを乗り切る体力を貯めこんだならラッキーだ。四女は、小学校卒業を前にして、学校に行きたかったようだが、Ｂ型の症状の吐き気にも自分で対処できていた。大きくなったんだなぁ。何よりも、僕自身が大丈夫であったのは、２月の最初に熱を出しておいたからだと思う。全てはつながっている。ありがたいことである。

2016年3月3日　寺田潤史

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