子供たちが春休みに入って、家の中がせわしない。いや、家の中というよりも、農繁期に入って畑作業がせわしなく、どこから手を付けていいのかわからないくらいという状態に、子供たちのあれこれが追い打ちをかけている状況だ。

　就職をする三女は、同級生とカラオケに行ったり、通勤で着る服を古着屋に買いに行ったりと、出かけることが多い。通勤が、いわゆるチャリ電チャリとなるために（自転車で駅まで行って電車に乗り、また駅から仕事先まで自転車を乗り継ぐというスタイル）、自転車も購入した。そういった必要な買い物にも僕が関わらなくてはいけないので、やたらと時間がひっ迫しているのだ。

　今度四年生になる長男には、サッカーの練習方法を朝から指示する。次年度もトレセンやアカデミー、五年生や六年生の試合に出ることになり、より一層本人も気持ちが入っている。まったく独自の練習方法を、次から次へと考えだすのは容易ではない。本人の試合のビデオ、Ｊリーグの試合、欧州サッカーの試合、はたまた各国代表の試合、さらには育成年代の試合、それらを見ながらイメージの浮かんだものを本人に指示するのだ。練習するのは本人だから、その練習方法の中から楽しさを見つけて繰り返していく、そんな練習方法を見つけ出さなければいけないのだ。

　うちで唯一の男の子である彼は、やはり姉たちとは違う何かを持っている。素直さの質が違う、と言ったらいいのだろうか？素直さを尊ぶことは、親ばかとは違う。こちらがひるむくらいに素直なのだ。たとえば、僕が毎朝、苗床の苗たちに水遣りをする。「それ、俺もやりたい」と言う。苗床の苗は重要なので、あまりやらせたくない。「そうだ、昨日植えた葉ものに水をやってくれ」と彼に頼む。「おお」と大喜びして、ジョーロに水を汲む。夕方には一緒に葉ものの苗を植えた。次の日、水やりを任せると、張り切ってジョーロを持ちだした。大事なのは、任せっきりにしないことで、できれば近くで作業をしながら話をして、本人の根気が続くように仕向ける。出荷作業の際には、シール貼を進んで手伝う。「俺、それやってみたい」と言うことが多いのだ。

　姉たちは、いろいろ手伝ってくれたが、アルバイトが前提であるか、長続きしないかのどちらかであることが多かった。子供に長続きをさせるのは困難であることが多い。彼は、サッカーの練習で、コツコツと毎日練習することをいつの間にか学んでいる。それもこれも、素直であるからできることかもしれない。ただ、年齢を重ねていけば、いつまでも素直の心持ちでいられるかは甚だ疑わしい。だからこそ、今の素直な時期に、やりたいことをさせる環境をできるだけ用意したいと思う。

　サッカー少年が、畑作業を手伝うことはあまり聞かないが、そのような経験はいつか何かの形で役に立つだろう。売上至上主義で子供ともあまりかかわらないで仕事ばかりして、という人生もありだろうけれど、今はできるだけ子供の素直な心は受け止めたいと思う。彼が、クレヨンしんちゃんのようなしゃべり方をするところは玉に瑕かな？

2016年3月24日　寺田潤史

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