５６歳、変化の時を迎えているのだと思う。正念場の世代、あるいは回帰の年代、最後の挑戦の時代に入りつつある、というようないろいろな見方をできる歳になったということか？今、iTunesで見知らぬバンドの音楽を聴いているGarbageというバンドの「Strange Little Birds」というアルバムだ。これが聴いてみると、意外としっくりくる。多分イギリス系のバンドだと思うのだが、まだ何も検索していないのでわからない。明るいバンドとは決して言えない音で、ここ１週間エリッククラプトンの最新作を車で聴いていた僕にとっては、まったく系統が違うバンドを聴いて腑に落ちている。

　音楽は、その都度、時代と自分を反映してきたと思う。今、創作活動から一端離れて、体を動かすサッカーとともにある時、明らかに聴く音楽が変わっている。それは、音楽を聴いて想起させるものが、右脳を使って深層心理に迫るような状態にはなかなかなっていかない、ということにもつながっているのだろう。もっとも聴いて思わず身を乗り出したくなるような音楽がめったにない、という時代と合わない自分も存在するのだが…。

　サッカーをはじめとしてスポーツというものは、案外内省的なものである。「可能性を感じさせるプレイ」とアナウンサーが絶叫しようとも、ほとんどのプレイは可能性を感じさせないプレイであり、「可能性を感じさせるプレイ」を発見するためにスポーツ観戦がある、と言ったら言い過ぎだろうか。今日、かのイチロー選手が新記録達成に関して発言していたテレビを見たけれど、３回に１回ヒットを打つことは３回に２回の失敗の上に成り立っていることであり、最多安打が最多挫折の裏返しであれば、内省的になるのも無理はないだろう。内省的ではあるが成長したい、うまくなりたいという楽観性を伴った練習の積み重ねは、楽器の練習とも共通するところがある。ただ、何事においても持続させることは簡単なことではない。

　畑と音楽、家族との組み合わせを十数年に渡って模索したところで、ここ数年のサッカーという別次元の体を動かすことを組み入れて、何が変わったか？考えている余裕がないという忙しさのせいもあるけれど、深く考えないようになったのかもしれない。まるで１０代の頃のように。サッカーの練習で、子供に何をさせているかというと、瞬間的な判断と技術による回答を脳内運動として刷り込ませているのだ。これは、畑作業とは違う性質のものだ。畑では、個々の野菜の成長を、天候や有機肥料成分や土などの物理的なことを考えてゆっくりと変化をさせていく。

　それに対して子供のサッカーでは、ボールのスピード、自分の走るスピード、相手のスピードや位置関係、カラダの向き、どこへボールを運ぼうとしているかなど、様々な要因を瞬時に判断してボールにアプローチする。子供は、試合中に見たことはすべて自分の意思とともに覚えているものだ。だから、どこにどのようなボールを蹴りたいかをイメージすることと、どのようにうまくいかなかったかをあとから一緒に考えることは重要になる。あとからそのプレイについて話さなければ、子供は忘れてしまうのだ。失敗も成功も積み重ねて吟味し、試合ビデオを見て考えることや自信を持つことも重要だ。あらまたサッカーの話！

2016年6月17日　寺田潤史

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