梅雨の中休みが、異常に暑い。今までの梅雨の中休みとは何かが違うのだ。気温や湿度だけを取り出しても、その何かは判断できない。これはもはや気候が破たんしているのだろう。僕たちはどうしても、今までの経験から季節を判断しようとする。そのようにして生きてきたのだから、踏襲するのは当たり前とでもいうように。しかし、地球の自浄作用なのか単なる長い目で見た上のくしゃみなのか、それはわからないが、少なくとも今までの気候とは違うことを毎日の畑で感じている。

　人は、年を重ねれば重ねるほどに、過去の経験から物事を判断しようとする。今、シャーデーの聴いたことのない曲を聴いているのだけれど、過去にシャーデーの曲をたくさん聴いてきたという経験が僕の脳の中に声質とともに蓄積されている。そのために初めて聴く曲であってもどこか懐かしさや安心感がある。そういうことが、気候にも当てはまるし、人間関係にも当てはまるのかもしれない。

　この頃、三女との会話の中によく話題に上ることの一つに、人の顔の印象がある。三女は、話す人の目を見て話すという。それは素晴らしいことだが、必ず瞼の一重か二重を確認するのだという。テレビで俳優を見ていても、まずチェックするのは一重か二重だという。なんてこったい！と思うのだけれど、第２には髪型だという。さらに、なんてこったいだ。僕は、髪型も瞼も見ていない。それでは何を見ているのだろう？と自問自答する。面と向かって眼をまじまじ見ることすら失礼と思ってしまうのだが、全体の印象から人柄を観察するのが常かもしれない。少なくとも、相手の表情や声の具合を気にしているのだと思う。重要なのは、相対する人がどこへ向かおうとしているかである。ただ、どこへ向かおうとしているかを表に出さない人も少なくないので、そう簡単に人様を判断することなどできないと思うのだ。

　家族や友人と相対するときにも、その瞬間にその人がどこへ向かおうとしているのかは、一番の重要事項である。人は、いろいろな性質を持ちながら、育つ環境においてそれを変化させていく。見知らぬ人がどこへ行こうと勝手な話だけれど、勝手な話なら袖すりあう多生の縁も無意味になってしまうのかな？確かに、単なる袖振り合う縁を勘違いすることもあるが、長続きする縁というものは、どこかに何らかの意味を探す価値があるのかもしれない。と、このような夢想的な想いは、野菜の納品の車の中で巡らすことが多い。

　畑ではあまりにやることが多すぎて、しかも暑すぎてただただ時間が過ぎていく。夏であるから有機物を分解する微生物も活発なので、野菜や草の成長、虫の成長も著しく速いのである。野菜の収穫物、つまりキュウリやナスやシシトウやピーマンや、青シソ、モロヘイヤ、空芯菜、そのほか夏野菜は、収穫時期が極めて短い。収穫時期が短いので、必ず毎日収穫しなければいけない。収穫と出荷で一日が終わってしまう。虫や草と対峙して、ゆっくり野菜と話す時間がほしい。夏に時間が止まってくれたなら、子供の頃のように夏を堪能できるかもしれないな。気候がおかしいと感じながら、何もできないで夏を過ごしてしまうそうだ。

2016年7月7日　寺田潤史

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