昨日は、次女の高校卒業式だった。二年前の長女の卒業式に引き続き、夫婦で出席した。芸術科のある高校らしく、合唱と吹奏楽の演奏に迎えられての父兄の入場だった。長女の卒業した私立の芸術科のある学校もそうであったが、その特色を全面に出すところは、公立高校といえども主張が感じられてよい。そして、最後に３年生によって唄われた校歌は、普通科の生徒の健闘も認められて、素晴らしいものであった。背後に、この学校の先生方の意地のようなものを感じたくらいである。

　同じ日、かまやつひろしが他界したことがニュースで報じられた。ああ、今でも頑張っていたんだなぁ、とニュースを見て知ったわけだが、漠然と思い出すのは僕が中学三年生から高校の頃の時代のことである。かまやつひろしと言えば、「我がよき友よ」だ。ニュースで伝えられるまで、吉田拓郎の作った曲であることを忘れていた。この曲をギターで弾いて歌った記憶はないし、カラオケでも歌ったかどうかはわからない。しかし、よく耳に入ってきた曲であることは確かで、一番はだれでも知っているくらいの歌詞だ。

　ふと思いついて、インターネットで歌詞とギターコードを調べて印刷し、ギターを弾きながら歌ってみた。実に無理のない曲である。歌詞も、一番二番が素晴らしい。最後まで歌ってみたが、六番までは長いから、一番二番だけをよく覚えているのだろう。

　「下駄をならして奴がくる　腰に手ぬぐいぶらさげて　学生服にしみこんだ　男の臭いがやってくる　アー夢よ　よき友よ　おまえ今頃どの空の下で　俺とおんなじあの星みつめて　何想う」そして「語り明かせば下宿屋の　おばさん酒持ってやってくる」「女房子供に手を焼きながらも生きている」と続く。

　こういう歌詞は、今の時代にはめったに聴くことがない。「我がよき友よ」という歌が時代とともに脳裏にこびりついていて、もはや歌詞なんぞ考えたこともなかった。僕が、こういう歌詞を書きたいのではない。こういう曲を書きたいのでもない。どうしてこうも僕たちは時代を変えてしまったのか？とこの曲を歌って見て思う。生きることが苦しい時代にしてしまったような、そしてもしかすると、あの年代つまり１９７０年代にも同じようなことを思っていた人がいたのだろう、と想像する。時代を危惧する人が…。

　政治のニュースを毎日見る。悲惨な殺人事件のニュースも。正直、見たくない。子供にも見せたくない。政治は、言い訳と対立の教科書のようなものだ。大人は子供の教科書のようなものであるが、見事に駄目な人間ぶりを子供に示している。官僚の国会での答弁など、子供にああいうお手本を見せて、それが勉強のできる人が進むべき道だといえるのだろうか？「我が良き友よ」の歌詞の舞台のように、若気の至りが散りばめられた世界のほうが、よほど子供に見せるべきものだ。そこには、答えも理由も、そしてわからないことすら、そのまま提示されている。

　次女は大学に進んで、油絵を生涯描くために学校の美術の先生になりたいそうだ。親に守られていない世界で、世の中の人をたくさん見てきてほしいと思う。

2017年3月2日　寺田潤史

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