暖かな日差しと、冷たい風が強く吹くような、交錯した気候の三月、人間世界はどうにも落ち着かない季節だ。新年度に向けて変化の兆しを味わえることはいいけれど、そのための煩雑な手続きが必要な季節でもある。農作業も夏に向けての準備の季節だが、まだ夏野菜の種播きまでこぎつけていない。葉もの類の畑への植え付け、ジャガイモの植え付け、葉もの類の種播き、みその仕込み、樹木の剪定など、右を見ても左を見てもやることだらけだったのだ。

　大詰めを迎えているのは確定申告。帳簿は完成しているので、あとは電子申告作業のみだ。確定申告期限のこり一週間を切って、精神的に余裕がなかった。次女の北海道引っ越しのための不動産契約も済ませたところで、プロバイダーの申し込みも済ませた。早めにやっておかないとインターネット接続工事日程など、間に合わなくなってしまうから、何とも落ち着かない日々だった。

　来週には、長女がドイツ短期留学に出発する。そのための旅行保険も手続きを済ませた。長女自身は、昨日まで演奏会などで忙しかった様子で、ようやくドイツに目を向け始めたくらいのようだ。周りで見守るほうがよほど大変だと思う。未知の世界というものは、心配してしまうものなのだ。ホルンの演奏上の心配は、まったくしていないのだが…。

　長男のサッカーも、トレセンのセレクションの時期で、足の怪我があったから少し気をもんだ。ようやく治りかけて練習も再開して、４年生５年生の試合に出てみたのだが、カラダが切れていないので別人のようだった。セレクションが１週間のうちに２回ある。最初のセレクションまでに追い込んで、１００％の戻りではなかったが、７割程度の切れだったと思う。１昨日になって、ようやく切れを戻した感じがある。汗だくの１対１で、僕が負けてしまった。歯が立たなかったのだ。からだの切れさえ戻れば、あとは思い切りやるだけだし、それでだめならあきらめもついて出直すことができる。週末の最後のセレクションまでに切れを戻すことができたので、僕としても安堵である。

　ジャガイモの植え付けは、すべて手作業で行った。去年は大雨が多くて、ジャガイモの発芽が異常に悪かった。今年は効率を無視して、種芋も切断せずに植え付け、大きく培土するにも鍬を使って、かなり原始的なやり方にしてみた。これが意外に気持ちいい。

　久しぶりに、納屋でエレクトリックギターをアンプで鳴らして即興演奏を録音してみた。マイクを使ってアナログ録音し、デジタルでパソコンに取り込む。専用のソフトウェアでミックスもするのだが、最終的にはアナログミキサーを通してスピーカーで聴く。この音が実に気持ちいい。もう自分の耳に忠実に行こうと思う。毎晩弾くアコースティックギターも、自分の耳にとても心地よく響く。この、耳が幸せを感じる状態を、積み重ねていこうと思う。

　３月の煩雑な忙しさも、一つ一つを納得のいく形でこなしていけば、楽しさを感じられるだろう。一所懸命に前に行こうとする人は、応援するに値する。見返りなんぞは期待しない。３月を切り抜けられれば、それだけで満足するだろう。

2017年3月9日　寺田潤史

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