１２月から３月まで、寒い季節には野菜の成長が鈍い。霜にあたって野菜の味は深くなるが、茎は固くしっかりする。野菜の成長が鈍るのは、微生物の働きが鈍るためである。温度が低ければ、有機物を餌とした微生物は動きが悪くなるのであろう。あろう、というのは、実際に微生物の世界に入って見たことがないからである。科学の積み重ねは偉大だが、その実証に立ち会う人の数は限られている。僕達は、科学者によって証明されたものを、鵜呑みにするばかりだ。話がそれた。微生物の世界をイメージすること、これは有機農業者にとっては大きなことで愉快なことでもある。見たこともない世界を、勝手に想像して真剣に向き合うのだ。

　で、４月くらいからは暖かくなって、微生物の世界も活発になる、と予想できる。実際に、葉ものたちは見違えるような成長を示す。だから、葉ものの天国となって、僕たちは忙しい。虫たちもまだ活発に動けない時期であるから、虫の害も少なくて野菜は美しい。見た目もきれい、というわけだ。それもほんのひと時のことで、すぐに虫の天国になるだろう。葉ものの天国も虫の天国も、天国には違いがない。どちらも自然環境が育ててくれる世界だ。

　翻って、人間世界はややこしい。新年度というだけでもややこしいのに、人が人を殺す世界が国単位で繰り広げられている。ややこしすぎるから政治家が必要なのか？政治家がいるからややこしいのか？折しも、地元では選挙カーが闊歩している。まるでお祭りでもするかのように、意気揚々と道をふさいでいる。街宣車よろしく大きな声がスピーカーに増幅されて、入れ代わり立ち代わり通りをやってくる。もっと静かにできないものか？ウグイスが鳴くようなこの季節は、選挙運動で台無しだ。

　野菜の出荷が忙しいことが、僕のカラダに負担をかけている。疲労困憊の日々が続いているので、できるだけ睡眠を長くとるようにしている。一昨日は、朝、布団の中で、肩や腕、首、腰などのマッサージに一時間を費やした。おかげで、昨日の朝は楽になったが、納屋で仕分け作業をして車に乗り込んだ時には、また疲れがどっと押し寄せてきた。仕分け作業も結構、疲れがたまるんだな。

　今日は夕方、長男が宿題をして、鼻水が出ていた。聞けば喉も少し痛いという。慌てて布団に寝かせた。熱はない。明後日、県トレセンの選考会がある。昨夜は、今年度最初のアカデミーがあって、家に戻ったのは２１時半近くだった。日曜日には６年生のリーグ戦もある。とてもサッカーの忙しい季節に入ってきたのだ。まず、カラダである。

　長男のサッカーの相手もする必要がないし、僕自身の疲れをとるためにも、さっさと仕事は切り上げた。１９時半には一杯やりながら、ヨーロッパチャンピオンズリーグを見た。レベルの高い試合を見ると、この先どのように長男が進んでいくかの指標を感じ取ることができる。進んでいくのは長男であるけれど、練習方法でどこを研磨するべきか僕が考える役目だ。長男の成長を見て、長男がどのようにサッカーを楽しんでいるかを見て、とりあえずここまではそんなに間違った方向に来てはいないかな。さてここから先はどうする？

2017年4月13日　寺田潤史

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