先週、長男のサッカーの試合中での怪我のことを書いた。それがこどもの日の金曜日のこと。そこから事態は急展開する。土曜日になって、お腹がまだ痛いという長男。昨日もらってきた痛み止めの薬を飲めばいい、と母親。薬を飲んで一眠りすると、お腹の痛みは少し治まったようだった。しかし、午後になって口から井の中のものを戻してしまった。「病院で風邪でももらったか？」「こどもの日の救急外来は混雑してたからなぁ」

　金曜日に病院から家に着いて食事もしたし、土曜日の朝も一緒に朝食をとった。風邪なら水分だけはとっておかないとと、お茶を飲ませる。しばらくすると、そのお茶も戻した。？？？夕方になって熱が出てきた。３８度ある。これは少々おかしい、と思い始める。日曜日の朝になって、３８．５度まで熱は上がった。お腹は痛い。水分を摂りたくても摂れない。金曜日に行った救急外来に電話を入れて、長男を母親が連れて行った。

　CT（Computed Tomographyの略、コンピュータ断層撮影）を一度撮って、よくわからなくて、造影剤を入れてもう一度撮った。どうやらすい臓がやられたらしい。すい臓損傷。詳しいことはよくわからないが、膵液が漏れ出て炎症を起こして熱が出たようだ。その病院では子供のすい臓に経験のあるお医者さんがいなくて、こども病院に搬送された。水分も摂れないのだから点滴するほかはない。だから入院は覚悟していたが、まさかすい臓とは！そして、こども病院へ入院とは！最低２〜３週間は入院して点滴治療し、万が一膵液が漏れ出て腹部に貯まるようならば手術もありうる、と言われたのだ。

　こども病院まで片道１時間半をかけて、毎日通う生活が始まった。入院した日曜日の夜、母親を病院から連れ帰った。翌日、二人で面会に出向くと、長男の目からは涙がこぼれ落ちる。何しろ、人生で一人の部屋で眠った経験のない長男である。夜は全然眠れなかったという。少し話をすると、また涙がこぼれ落ちる。母親がハンドタオルを差し出して、これで拭いなさい、と言う。そしてまたいろいろ話す。またこぼれ落ちる、の繰り返しだ。僕達の帰り際、長男は思わず鳴き声を出してしまう。考えてみれば無理もない。はじめて一人で眠って、初めての見知らぬ場所で、お腹の痛みを堪えるのだ。心細いとは、まさにそのことだろう。

　痛み止めの点滴が効いてきたのか、次の日から痛みは少しずつ治まっているようだった。治まれば、寝ているだけでは暇で暇でしょうがない。食事も飲料水も摂れない。四六時中点滴につながれてもいる。そこで、ヨーロッパサッカーやJリーグの試合データを印刷して持っていった。ブンデスリーガやスペインリーガエスパニョーラ、イングランド・プレミアリーグなどの詳細順位表、得点王ランキング、試合データなどである。

　嬉しいことに、こども病院ではDVDプレイヤーを貸してくれていた。そこで、長男のプレー集やヨーロッパサッカーの試合のDVDを持ち込むことにした。ただ、プレイヤーの互換性があるので、レコーダーで録画したものをテレビで再生し、それをビデオカメラでもう一度撮影しなおしてDVDを作成する、という面倒な手順を踏んでいる！

2017年5月11日　寺田潤史

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