長男は無事、先週の土曜日に退院することができた。その前の木曜日に担当医師と話をしていたので、退院当日は医師からの話は特になく、あっけなく荷物をもって退院かと思われた。看護婦さんが、最後に栄養士さんからお話があります、と伝えてくれた。ああ、通り一遍の栄養の話かな、と思ったが、実際は違った。完全な食事制限である。

　入院１０日目から与えられていた病院食は、他の患者とは違うメニューだったらしい。膵臓に負担のかからないように、長男には長男のメニューが考えられていたのだった。それを考えてくれていた栄養士さんが、三十分ほど入念に食事制限の話をしてくれたのだった。簡単に言えば、油の制限である。担当医師との話で、大雑把に揚げ物などの油制限の話は出ていたので、その程度の制限かと思っていた。しかし、肉の油、植物油、ごま、など一切の油は控えてほしいとのこと。たとえば、ハンバーグや肉団子を作るなら、鳥のささみのひき肉で、というような具合である。ああ、そこまで考えてくれていたとは、ありがたい話である。

　退院して、家に戻って、さっそくジュビロの試合をテレビで見る。怪我しなければ、スタジアムで市内小学生一斉観戦の予定だった。試合は負け、外に出てボールを触っていいよ、と伝える。もちろん触るだけだ。足裏でボールを転がす。ジンガの動かないバージョンである。ああ、ジンガなんて、うまく説明できないな、ボールをできるだけ見ないで細かくボールを動かす練習といったらいいか？１０分ほどで切り上げさせる。

　次の日には、少しリフティングしてみる？走ったらいかんよ、と伝える。なんといっても二週間以上、ボールを蹴ってないのだ。筋肉もないし、と思ったが、軽く１００回以上はリフティングできていたようだった。なんだ、筋肉とか関係ないのか？感覚を覚えていればいいってこと？そのあと、野菜の納品に一緒に連れていき、帰りに買い物をした。長男は、そこで材料の良いものの中からパンを買おうと思ったらしい。長男はパンの売り場に行き、片っ端から原材料表示を確認していく。長男が食べていいようなものは皆無だった。仕方がないから、栄養士に許可されていた、しょうゆせんべいとわらび餅、ニューサマーオレンジ、あじ、釜揚げシラスなどを買って帰った。パンは、いつもの母親の焼くものなら大丈夫だから、それを待つことにした。

　ささみのひき肉はなかった。そこで、最後に地元の肉屋さんに立ち寄り、ささみのひき肉を挽いてもらって買ってきた。学校給食の献立も油物中心なので、母親にハンバーグなどを作ってもらって持ち込むというわけだ。食事制限も負担がかかる。夜は、Ｕ２０ワールドカップサッカーを、お茶とせんべいで観戦した。

　練習メニューは、全速力で走らせない、毎日少しずつ負荷を増やしていく、ゆったりとしたメニューとした。コンテナを並べて、その間を正確にボールを通す練習や、利き足でないほうのアウトサイドでのリフティングなどである。僕との練習では、ひたすらパスとトラップを左右の動きなしでやったり、ボールにカーブをかけさせたり。チームの練習にもまだ参加させない。少しずつ筋肉を戻し、感覚を戻すのである。慌てないように。

2017年5月25日　寺田潤史

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