怒涛の勢いで五月は去った。気が付いたら、五七歳になっていた、くらいのスピードである。五七歳、ありえない数字だなと思う。五七歳というイメージと、自分自身をうまく重ねることができないのだ。ただ、カラダの回復力だけは、年相応だと観念している。どんなに長男とハードなサッカーの練習を毎日したとしても、カラダの回復ということに関しては、あまりにも時間を要することに呆れるばかりだ。

　毎日、野菜の納品で車を運転するのだが、この頃は高齢者のドライバーが目立つようになった。センターラインをオーバーしても気にしない運転者は毎日のように見かけるし、一旦停止をしないドライバーも２日に一度は見かける。その高齢者に自分は近づいている、という感覚は僕にとって新しい感覚である。

　長男の二週間の入院中、僕も疲れが出た。のどの痛みにいつもと違う違和感を覚えたのは、マスクをしないで面会に行った次の日だった。かかりつけ医に抗生剤をもらっても、なかなか熱が引かない時には、インフルエンザを疑った。長男の入院中に、僕がインフルエンザにかかってしまっては、生活そのものが破たんしかねない。そう思って、また近所のかかりつけ医に検査を頼んだのだが、あっけなくインフルエンザではない結果が出た。知らず知らずのうちに、長男の入院という精神的なダメージを貯めこんでいたのだろう。疲れがたまるだけではなくて、回復にかなりの時間を要すようになったことが、歳を重ねたことのわかり易い特徴だ。

　３週間ほど、長男とサッカーをしない日が続いた。そして、長男とまたサッカーをする日に戻った。翌朝の足のふくらはぎの疲れは、軽いものではなかった。毎日カラダを動かしていることは、カラダを動かさなくなってはじめて貴重な継続であることを教えてくれる。長男の入院中、容体が急変しないとも限らないので、お酒を飲むのはやめておいた。点滴を外された入院１０日目にしてようやく、お酒を飲む気になった。お酒を飲んでも飲まなくても、僕の疲れの軽減には影響がなかったような気もする。ただ、この頃は、２合以上のお酒をカラダが欲しない。おいしく飲めなかったら、お酒の意味がない、とも思う。そのこと自体が年を重ねたことかもしれない。

　年だ年だ、と感じることを書いたが、実はそのように年を感じていないところが、危ないなと思っている。だいたい、小学５年生と真剣にサッカーで１対１をしていること自体、あほな年の取り方かもしれない。ただ、これが僕のやり方で、ほかのやり方を知らない。子供の心に火をつける、ことしかやりたいことを加速させる方法を知らないのだ。

　長男の入院で、畑仕事は大幅に遅れた。去年５０万円ほど稼いでくれたオクラだが、その種播きは長男の退院後という始末だ。ナス、ピーマン類の植え付けもそうだった。病院通いと出荷、配達で１日のほとんどの時間は費やされた。長男の怪我の直前に草刈機を回したが、次の草刈りもまた退院後である。怒涛の勢いで５月が去っていった言い訳は以上のようなものである。そして、明日は、長男の退院後はじめての検査である。果たして通常食に戻ることができるのか、試合、トレセン、アカデミーに戻ることができるのか、な？

2017年6月1日　寺田潤史

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