長男の退院後１３日経過しての検査は、血液検査とエコーによるものだった。お医者さんの使う機器については全く無知なのだが、血液検査でいろいろな数値を示してくれるものは、結果が出るまでに２時間を要した。待合室で待つ間、様々な患者さんと家族の姿を見ていた。こども病院だから患者は子供さんである。そこには、必ず愛と呼べるようなものが漂っていた。親御さんにとって、自分の子供はかけがえのないものである。病気や怪我は誰にとっても辛いものかもしれないが、家族で一緒に歩む姿は、真剣に生きることの証でもある。

　長男の検査結果は、正常な値の範囲内だった。ほっと胸をなでおろした。食事制限も解かれ、暴飲暴食のような油物の食事の取り方でなければ、全面解禁というものだった。長男は、そこが一番嬉しいようだった。今後一年間は、長男のカラダに異変がないかどうかを見守らなければいけないが、食べることができる、動くことができる、そのありがたさを享受できることは、今回の怪我、入院での大きな収穫物である。

　退院直後から、少しずつ少しずつ増やしていったサッカーの練習だが、もうすでに怪我前と同じレベルの負荷をかけている。ただ、今までと違うのは、練習をしすぎないように気を使うことである。足腰の痛みがあった怪我前は、足腰の痛みが出たら練習を控えるようにしていたものだが、今は足腰の痛みがないのだから、気を遣う部分は減ったくらいだ。

　万が一に備えて、お腹にはプロテクターを巻いている。退院に合わせて調達したもので、本来はろっ骨を守るためのものだが、それをずらしてお腹と背中を守るように巻いている。練習の時はもちろん、これからまた試合に出る時も、当分は巻かせるつもりだ。夏はちょっと暑いけれど。

　検査の翌日には、６年生のリーグ戦があって長男もベンチ入りしたが、試合には出られなかった。試合に出られない人の気持ちを、少しは理解できたかもしれないから、それも良い経験である。コーチが後で言うには、「怖くて使えなかった」そうである。痛みのないカラダの内部のことであるし、経験や前例がないタイプの怪我だから、使う側が慎重になるのも無理はない。足の怪我であれば、まったく動かさないこともないのでなかなか治りにくいという側面もあるだろうが、２週間完璧に休んで治療に専念したし、そこからさらに２週間をリハビリに費やしてきた。本人は全く痛くないよ、もう治ってるよ、と汗だくなって練習をしている。

　一方、先週は長女からメールが入った。テレビ番組にチラッと映るかもしれない、とのこと。日曜日の昼間の番組なので、録画予約しておいた。徳光和夫アナウンサーが美女を引き連れて路線バスの旅をする、というもの。美大から音大へとバスを乗り継いで行くのだが、音大の全景や練習風景が映し出されていた。音大の中に僕もつれ合いも入ったことがないので、それだけでも長女がどんなところで日常を過ごしているかを垣間見ることができてよかった。木管五重奏でホルンを吹く長女の姿が、そんなに短くもなく映し出された。長い髪を染めて、コンタクトレンズをして、化粧して、黒基調の洋服でスタイルよさそうに、現代風のお嬢様に見えたかな？もう僕の手の届くところにはいないような、別世界のようにも…。

2017年6月8日　寺田潤史

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