長い夏になりそうだと、と感じた七月初旬からもうひと月も経ってしまった。実際に、その長い夏の真っ只中で悪戦苦闘している。一昨日の朝まで、朝の最低気温が２６．５度と高い日が続き、どうにもぐっすり眠れない。蛇行した台風５号の影響だろうけれど、湿度も高い過酷な日々がまた続いていた。

　そこへ突然、最低気温２２．９度という９月のような朝がやってきた。エアコンがないのだから、当然タオルケットすら掛けて寝ていない。朝の風が冷たくて起こされた。うーん、嬉しいような、もう９月かと嬉しくないような、妙な朝である。今朝も最低気温２５度と寝苦しくない朝だった。これは助かる。が、僕のカラダはもう疲れがピークである。急に涼しい朝がやってきたからと言って、疲れも簡単に消えてしまうわけではない。蓄積されたものは、なくなってしまわないのである。

　僕と長男の、今朝の話題は、バルセロナ所属のネイマールのパリ・サンジェルマン移籍決定のニュースだ。ここ数日、サッカーニュースを賑わしていた話題である。移籍金２９０億円という数字ばかりを取り上げる記事も多い。サッカーの選手の売り買いの金額は、感覚的によくわからない。１億円単位などという僕には縁のない金額で、毎日百円あまりの野菜を袋詰にすることにヒーヒー言ってるくらいだもの。

　ネイマールはともかくとして、そのサッカーの世界に行きたいという長男を応援するのも、なんというか妙な感じではある。あまりに得体の知れない金額の世界は、サッカーだけでなく、いろいろなスポーツやギャンブル、政治、芸術、株式市場など、どこにも転がっている話なのだろう。子供たちは、純粋にサッカーならサッカーだけに集中するし、ネイマールだってメッシだってそのように育ったはずだ。長男がその世界に行くことができるかどうかは別として、少しずつどのような世界かを理解していくこともまた社会勉強なのかもしれない。

　夕方、四女が納屋でアルバイトをしていた。ファーマーズマーケットへ出す野菜の袋に、うちのシールを貼るアルバイトである。この頃はいつも四女が担当してくれている。iPhoneでドラマを見ながらののんきなアルバイトだ。横で僕は、宅配便の出荷準備をしていた。ふいに四女が、 「おとうさんは、どうして農業を始めたの？」と聞いてきた。サラッと説明はしたけれど、四女がそのようなことを聞くのは初めてかもしれない。自分の進路を決め兼ねている状況の四女が、頭の中で何を思ったのかはわからない。本人が農業に興味が無いことだけはわかっている。四女は、自分自身が興味のないことは長続きしない、ということを理解している。何かを質問することは、ひとつのとっかかりになる場合もある。人が、進路を決める、ということの難しさを味わっている。

　サッカーという進路を決めている長男が、自分の思い描いたとおりにならなかった時、それもまた試練になるだろう。ただ言えることは、進む方向が決まっていると頑張ることができる、ということだろう。それは、ネイマールやメッシでも変わらない。

2017年8月4日　寺田潤史

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