長女から、ストックホルムに着いた、と連絡があった。昨夜午前零時半ごろのドーハ行の便に乗って乗り換え、１９時半にはスウェーデンに到着したのである。案外早いのだなぁ、と思う。涼しいか？と聞けば、上着を着たら暑かった、と返事がある。メッセージとはいえ、リアルタイムで日本とスウェーデンで会話ができるのだから、時代だねぇ、と連れ合いと頷きあうのである。

　今回の短期留学は、長女の師匠主導の留学で、大学で費用を負担してくれるものだ。だが、手配は自分でやらなければいけない。僕が担当したのは、往復の航空券と、到着したばかりのホテル１泊、最後の１泊の手配だけである。春のドイツ短期留学は、セミナーの申し込みとホテル全泊の手配、列車の乗り方、航空券、保険まで僕がやった。そういう意味では、長女の少し自立し始めの気配を感じることができる。実際、ストックホルムからどのような経路でホテルに到着したか、僕にはわからない。子供が自立していく過程を見るのはいいものだ。そんなの当り前？という意見もあるだろうけれど、親は心配するのも仕事の一つ。まあ、うまくやってくれ、と願う。

　卓球部の部長になった四女は、相変わらずに毎日キャピキャピしている。が、家のことを手伝ってくれる頻度の高いのも四女である。姉妹の中で、唯一彼氏ができるのも四女なのだ。こちらも心配する親の役目を担っているが、本音はそんなに心配していない。心配しているのはやはり進路である。進路は、今のところまったく白紙だ。高校進学するか働くか、も未定だ。でも、僕だって、その年齢のころは進路を決めていなかった。

　僕の中二のころは、将棋一本やりであった。小学生のころの野球熱と、先輩から野球部に入れと言われていたことで、当然中学で野球部に入るつもりだったはずなのだが、一転してバスケットボール部に入った。しかし、野球とは違って、未経験のバスケットボールではどのように練習していいのか皆目見当がつかなかった。その当時の記憶は定かではないので、将棋に夢中になった経緯はわからないが、中学二年では将棋道場にも通っていた。そして、中学三年になって、受験ということで親に、将棋ばかりやっていてはだめだ、と言われて、あっさりと将棋を絶った。その経緯も今となってはよく覚えていないが、そこでギターを始めて音楽に夢中になった。

　つまり、進路を考えるのではなく、ひたすら夢中になっていただけ、であろう。親も、ちょうど仕事を変えて事業を始め、大変な時期だったから構っている暇などなかったのかもしれない。そのような中学二年生の時代を振り返ってみて、四女が進路を決めかねている様子は、普通のことだなぁ、とも思う。ただ、四女が、皆が行くから高校へ進学する、という態度はとっていない、ということが興味深い。

　長女も、中学三年になるまで何も進路は決まっていなかった、ということは何度も書いた。僕は、長女の進路決定に至るプロセスに立ち会っている。無謀な進路決定であったが、結果的に無謀ではなかったことを、長女は証明してきた。大学三年になって、卒業後の進路についてはまだ結果を出していない。最終的にヨーロッパに移住するのか、日本でホルン奏者としての仕事を見つけていくのか、ストックホルム滞在で何を得るのだろう？

2017年8月10日　寺田潤史

バックナンバーへ

ご意見、ご感想、お問い合わせは、下記よりどうぞお寄せください。

★　ひらく農園の野菜の入手方法

☆　このページの最初に戻る