長女のコンクールは、二次予選までで、本選五人には選ばれなかった。その二次予選１５人全員の演奏が、NHKのFM放送で流れた。長女の演奏は、平坦なものだった。技術的には、かなり進歩したと言っていいだろう。表現力と自発性がこれからを左右することになりそうだ。本選出場者の中には、唯一大学生（３年）の男性が選ばれている。同年代に先を越されて、何か感じるところはあるのだろうか？

　芸術でもスポーツでも、自分を表現するには、技術が伴ってはじめて人を納得させられるという部分があるだろう。技術と、その人が持って生まれたものとがミックスされた時、オオ！と思わず叫びたくなる光景に出くわす。その持って生まれたものは、自分ではなかなかわからないものかもしれない。長女の演奏の中には、早いパッセージにおいてその持って生まれたものを感じることがあるのだが、大きな流れや感情の発露という意味では、それは今の段階では生きてこない印象である。果たして、ここで頭打ちで終わるか、この先にもう一度ぐんと伸びるか、全ては長女次第だ。

　長男のサッカー、県大会につながる予選リーグは、結果的に３位で敗退が決まった。去年この地域で優勝したチームに引き分けて、ちょっと色めき立ったが、去年の３位決定戦で負けた相手に今年もあっさりと負けた。相手の２チームは、去年に比べて技術の高い子を補強しているし、長男チームは毎日練習しない自発性を見せない子が相変わらずに大多数のようである。５年生の試合はしばらくないし、６年生のカップ戦もひと月以上先だ。長男の気持ちは、次の日曜日月曜日に行われるトレセン大会に向いている。

　長男の自発性は、サッカーの練習以外でも、朝起きて僕のiPhoneを使ってヨーロッパサッカーの試合結果と今日の予定を見る日課からも見て取れる。チームやアカデミーの試合形式においては、相手ボールの時のポジショニングをみているだけでも面白いくらいだ。相手からボールを奪うためのポジショニングは、持って生まれたものだと言っていいだろう。味方ボールで攻める時のポジショニングも同様だ。そして、ボールを長男が持った時の、ワンタッチツータッチのパス、あるいはドリブル、あるいはシュート、それらが表現力となる。それはもって生まれたものというよりも、ヨーロッパサッカーを見ることで培われているものかもしれない。

　長女の自発性は、中学３年の春、ホルンでいく、と決めたときからの練習という意味で発揮されてきた。それは主に技術的な側面である。しかし、ここから先、演奏家になるためには、その技術を活かす表現力が重要なことは言うまでもない。その人となりを表現するには、長女自身が音楽に向き合うエネルギーと、物語を紡ぐ独創性が必要だ。要求されることばかりをこなしているばかりでは、ただの八方美人で終わってしまう。私はこういう人間なんだよ、という一種のわがままが必要なのかもしれない。

　子供たちの自発性や表現力に、親はいつまでも関われるわけではない。ただ見ているだけ、それを楽しんでいるだけ、の親でいいのかもしれない、かな？

2017年10月6日　寺田潤史

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