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「落ち着きのない春 その2」

 今日の最高気温は24度。まだ3月、桜満開でこの気温は妙だ。この暑さの中、次女は北海道へと帰っていった。沿道の桜並木を眺めながら、「北海道は寒いだろうなぁ」とつぶやく。銀座の画廊からの展覧会の誘いの話は、少しお金がかかることでもあるので、「無理をしないように」と伝えておいた。今日になって、札幌のギャラリーから夏の展覧会の誘いがあったようだ。12月の個展を見に来てくれたようで、話を聞いてみることにしたようだ。展覧会は意義のあることだが、自分の作品をどんどん描いていくことが大事だよ、と伝えた。

 4月から中学三年生になる四女。去年の秋から大工になりたい、と言い出していた。そこで、この春休みに、台風で壊れたところがある物置の修繕にトライさせた。この物置は、本格的な建物ではなくて、資材や苗土を作る撹拌機などを置いて、雨から守るための場所である。僕が作ったのはもう17〜18年前だと思う。一部の枠組みの角材が朽ちてしまったところがあるし、トタン屋根の何箇所かが飛ばされている。ここのところ忙しくて、修繕にまで手が回らなかったのである。

 四女に、朽ちた木に残った釘を抜いて取り外し、代わりの角材をあてがうように指示。釘を抜いて朽ちた木を取り外すまではできたが、角材をうまくあてがうことができなかった。そこは、少し力も必要だし、ある程度のコツも必要かもしれない。それっきり、四女は自分から進んで修繕には来なくなった。仕方がないから、僕が代わりの角材をあてがった。そのあてがうことに一つの充実感がある。ところが四女は、そこで充実感というか面白みを感じていないようだった。

 ああ、これは大工にすぐになるということにはならないな。進路は、一から考え直しだな、と言うと、簡単に同意。さて、どうしましょ?自分がやって面白いと思うことが見つからなければ、時を待つしかないから、高校進学かな。大工の線を残すなら、建築科に行くのもいいし、普通科やその他の科を検討するのもよし。

 入院したおふくろは、一週間経たずに早くも外泊で家に戻っている。脳梗塞の範囲としては狭い範囲ではないらしいが、運が良かったのは血栓箇所が生活に大きく影響を及ぼすことがないところだった。一つ血管が違っていれば寝たきりだったらしい。不幸中の幸いである。ただ、認識力というか、注意深さを必要とする場面ではうまくいかないことも少なくない。

 たとえば、家にいてできれば炊事をやってほしいが、できることとできないことがあるようだ。コンロの火の火力調整はうまくできるが、今風のコンロのちょっとした性質に合わせて鍋を置く、ということができない。包丁はうまく使えるが、皮むき器はうまく使えない、など。それら、実際の家での生活を経験して、また病院に戻り、医者に報告するという計画だ。

 血栓でもう使えなくなった脳の一部は、そのまましぼんでいくらしい。周りの生きている脳が、学習するような形でその使われなくなった脳の役目を負うようになれたらいいのだが、それはリハビリと運次第かもしれない。病室では、今までのように俳句を作ってメモにペンで書き溜めていたようだから、知的なことは正常に近いのだけれど…。

2018年3月29日 寺田潤史


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