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「落ち着きのない春 その3」

 あっという間に4月を迎えて、子供たちは新学期に入った。長男は小学六年生、四女は中学三年生、長女は大学四年生と、それぞれ最高学年となり、いろいろな意味において正念場の時期に入ってきたのである。次女は大学二年生だし、働いている三女ともども気楽な立場かもしれない。この年度替わりの時期は、とても新鮮な時期でよいのだけれど、なんだかんだとお金がかかる時期でもある。憂鬱な気分は、働くことでお金に転換しよう。

 昨日の夜中に、長女は日本に戻った。戻る前に、何回か途中経過のメッセージやLINE電話が入った。そしてドイツのテーゲル空港からまたLINE電話が入る。今後のことの相談である。ドイツでは、女性のホルンの教授に演奏を聴いてもらえて、その先生に付きたい、という長女の希望である。そのためには、どのような準備をして、どのような手順で時を過ごすか、いろいろ思案のしどころだ。とりあえずまた、八月にその教授のレッスンを受けに行くとのこと。そう簡単に事は運べない、と思うがどうなることか?

 長男のサッカーは、毎年この時期、アカデミーの選考会がある。今年は先週の金曜日の夜に行われた。地域トレセンの合格者の中からアカデミー選考会に参加できるものを選び、3地域で70人弱程度が参加した。8〜9人のグループに分けて、試合を行い、コーチが評価するのである。組分けは、コーチの側であらかじめ割り振ってある。新6年生ともなると、皆カラダも大きくなる。それに伴って、足も早くなるから、スピードがある。今年の特徴としては、守備に行くスピードが早くなったという印象がある。だから、得点場面が少なくなった。

 長男は、ほとんどを中盤の真ん中でプレイした。シュートらしいシュートを打つ機会も殆ど無いままに、無得点で選考会を終えたのだった。そういう意味では最低の出来である。実は、この選考会、アカデミーの選考会であるのだが、同時に県トレセンの選考会推薦者を決める場でもあった。長男も僕たち親も、当然そこを意識していた。だから、「ああ、これはだめだな」というのが選考会を終わっての認識だった。

 長男は、「でも、パスは出していたでしょ?」と答えた。「そうだな、パスはいい縦パスを出していたし、コーナーキックも良かったと思うよ。守備やボール扱いはちょっと遠くて見えなかったけどね」と僕は返した。夜、家で一杯やりながら、今日の選考会を振り返った。「確かに得点という意味では駄目だったが、アシストや縦パスは、相当数決めていたし、技術的なところは近くで見るコーチたちには伝わっただろうな」と連れ合いに感想を伝えたのだった。

 結果的に、県トレセンの選考会に推薦された6人の一人に選ばれた。去年に引き続き参加できることは、少し感慨深い。去年、選考会を受けて落とされたあと、試合中の怪我で入院。そこから這い上がってきた1年である。ちょうどその怪我の直前の試合のビデオで見る機会があったのだが、1年でかなりの進歩が認められた。そしてまた、僕も長男も、やるべきことが整理されてきている。県トレセンは、あくまで目標の一つに過ぎず、長男が自分のサッカーを常に表現できればそれでいいのである。自信を持って選考会に臨むだろう。

2018年4月6日 寺田潤史


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